資格のすゝめ(1)中小企業診断士編

目次

中小企業診断士とは

いわゆる士業系の資格の中でも、社会経験を積まれてきたシニアにお勧めといえるのが「中小企業診断士」です。国家資格である中小企業診断士の業務範囲は、中小企業の経営全般に関するコンサルティングや経営改善計画書・経営診断書など各種書類の作成、セミナーでの専門知識の発信など多岐にわたります。

企業での社員としての勤務から独立して開業といったような働き方が選択できる資格でもあり、キャリアアップを目指す方には最適の資格といえます。若い方の取得も多いですが、中小企業診断士の実務においては社会経験が重視されることも多く、他の士業と比べても、企業などでのキャリアの長さが有利になりやすい職業といえるかもしれません。

中小企業診断士 .1

中小企業診断士の活動領域

中小企業診断士には、税理士や社会保険労務士のような独占的な業務はありませんが、その分、汎用性が高く、様々な領域で資格を活かすことができます。資格取得後の働き方としては以下のようなものがあります。

 1. 在職企業での勤務

特定の資格の有資格者に「資格手当」を出す企業も多く、中小企業診断士の場合、その相場は月額1~3万円程と言われています。自身のキャリア形成の一環として資格を取得し、資格手当で収入をアップさせながら、そのまま在職企業で働き続ける方も多くいます。勿論、資格手当に加えて、難関資格を取得したことで社内評価が上がり、昇給や昇進に繋がるケースもあります。

 2. 一般企業への転職・再就職

 中小企業診断士の資格は、経営に関する体系的な知識を有していることの証明となるため、転職・再就職においても有利といえます。特に経営企画、コンサルティングなどの職種での応募では、実務経験に加え、経営の専門知識を身に付けていることを武器にできます。中でも大手コンサルティング会社での勤務は、中小企業診断士の花形ともいえ、これを目指す有資格者も少なくありません。

 3. 公的機関、士業事務所などへの転職・再就職

 商工会議所、中小企業基盤整備機構、中小企業支援センターといった公的機関では、中小企業診断士の有資格者を職員として募集しています。例えば、各地の商工会議所に「経営指導員」として所属し、窓口や巡回での金融相談、創業相談、各種書類の作成支援、経営者の悩み相談などの相談業務に従事するといった働き方があります。また、会計事務所や税理士事務所などの士業事務所でも、中小企業診断士を専門スタッフとして募集するケースもあります。

 4. 独立開業

 資格取得後の目標として、独立開業を目指す方も多くいます。自身の「中小企業診断士事務所」を構え、顧客に対する経営コンサルティングを請け負うことになります。

 どの士業でもそうですが、開業してやっていけるかは人脈次第なので、独立前から積極的に社外人脈を築いておくことが重要です。試験合格後の実務補習や、資格登録後の診断士協会での繋がりも人脈獲得の機会となります。先輩診断士の事務所にスタッフとして勤務し、実務経験を積むと同時に人脈を広げるのもいいでしょう。

資格取得のメリット

中小企業診断士の資格を取得することには、以下のように多くのメリットがあります。

 1. 働き方の幅が広がる

 上記のように、中小企業診断士の仕事の幅は大変広く、自身の経験や志向に合った働き方を選択することができます。

 2. 経営に関する知識と信頼が得られる

 中小企業診断士試験の範囲には、経営や財務に加え、マーケティング、法務、システムなど広範な分野の知識が含まれます。資格取得のための勉強を通じて、これらの体系的な知識が身に付くため、一般企業での勤務や、起業・経営にも活かすことができます。

 また、「経営コンサルの専門家」である中小企業診断士の資格を保有していることで、自ずと社内外の信用を得られることにもなります。先述のように昇進などの機会に繋がったり、初対面の人との信頼関係が構築しやすくなるといったメリットがあります。

 3. 幅広い人脈を得られる

 中小企業診断士は各地に協会があり、横の繋がりが広い士業です。資格の取得後は、企業などに在職したままでも、診断士協会での研修や様々な活動に参加し、人脈を拡大していくことができます。診断士としての独立開業を目指す方は勿論のこと、その他の起業を目指す場合でも、幅広い人脈を獲得できることは有利になります。

中小企業診断士の収入

 収入面においても、中小企業診断士は申し分ない職業といえます。勤務か独立開業かで差はありますが、中小企業診断士全体の平均年収は約1,000万円とされており、これは弁護士(平均945万円)や税理士(平均659万円)といった高難度の士業の平均を上回る数字です。

 令和2年度のアンケート調査*では、直近1年間で100日以上の実働があった中小企業診断士の内、実に34%の人が、1,000万円以上の売上・年収があったと回答しています。一方、足元に目を向けても、全回答者の3分の2にあたる66.9%の人が売上・年収500万円以上であり、回答者の中には中小企業診断士としての年間稼働時間が少ない人も含まれていることを考えると、実質、この資格で生計を立てられない可能性は低いといえるでしょう。

資格取得の難易度

 中小企業診断士試験の合格に必要な勉強時間は、一般に1,000時間程度と言われています。これは社会保険労務士や行政書士と同程度の難易度であり、士業系資格の中では比較的ハードルが高くない部類に入ります。1年間での合格を目指すなら、1週平均20時間、1日平均3時間程の勉強時間が必要になりますが、合格者の実に9割以上は企業などで働きながらの受験であり、仕事の合間にコツコツと勉強を進められるタイプの方に適した資格ともいえます。

 中小企業診断士試験は、1次試験(7科目のマークシート式)と2次試験(筆記と口述)に分かれており、1次の合格率は年度によって20~40%前後とばらつきがありますが、2次の合格率は例年18~19%程度で推移しています。試験全体を通しての合格率は、例年3~8%程の範囲で変動する計算になります。コンサルティングの資格であるため口述試験も重視されており、社会経験が役立つ部分です。

 なお、1次試験は「経済学・経済政策」「財務・会計」などの7科目からなり、全ての科目で60%以上の得点を得る必要があります。1科目でも60%に満たなければ合格とならない厳しい試験ですが、反面、一度合格した科目は翌年と翌々年の試験では免除にできるため、3年間かけて全科目を取ればよいという考え方もできます。自身のペースに合った受験計画を立てることが重要です。

中小企業診断士に向いている人

 中小企業診断士は、勤務先や顧客との関わりが重視される仕事であるため、コミュニケーション能力の高さは必須です。加えて、企業の業績・現状や各種の法令、業界の見通しなど、様々な要素を多角的に分析する必要があるため、多面的・俯瞰的な思考を得意とする方が有利となります。

 また、キャリアアップへの熱意や、仕事や学習へのモチベーションの高さも、資格取得やその後の業務には欠かせない条件です。

 総じて、多くの人と関わりながら仕事をすることにやり甲斐を感じる方、自身の成長のための努力を惜しまない方に向いている資格といえるでしょう。

中小企業診断士活動状況アンケート調査:参照元はコチラ

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