資格のすゝめ(9)簿記検定編

目次

日商簿記検定

資格取得を検討されているシニアやプレシニアのなかには、日商簿記検定はどのような試験なのか、イメージが湧かないという方もいらっしゃるのではないでしょうか。

そこで今回は、簿記や日商簿記検定についてご紹介します。

簿記とは

そもそも簿記とは、企業の日々の経済活動を記録(帳簿記入)し、会計期間ごとに決算を行い経営成績と財政状態を明らかにする作業のことです。簿記の知識は、経理の仕事をする方だけが必要なものと思われがちですが、実は様々な業種・職種に役立ちます。簿記を学ぶことで、会計の基本知識以外にも以下のような能力も身につくためです。

・会社の数字や財務諸表を読める

・会計的な視点で経営を分析できる

・取引先の経営状況をチェックできる

・費用対効果の見極めができる

・個人事業主として開業した場合、自分で会計処理ができる

日商簿記検定とは

日商簿記検定は、日本商工会議所が主催する資格試験の1つです。簿記検定を実施している団体は複数ありますが、そのなかでも日本商工会議所は、知名度や社会的評価が最も高い団体です。

日商簿記検定は、「簿記初級」「原価計算初級」「3級」「2級」「1級」の5つに分かれています。「簿記初級」や「原価計算初級」などの初級レベルもありますが、一般的には3級の受験から始める方が多いようです。

日商簿記検定に受験資格はなく、学歴や年齢を問わず誰でも受験することが可能です。また、例えば「3級を取得していないと2級の受験ができない」ということはないので、好きな級から受験できます。

取得するメリット

日商簿記資格を取得することにより、就職・転職・昇進など様々な場面で高い評価を受けることができます。簿記に関する知識がある証明となり、即戦力として認めてもらえるためです。

会社によっては、日商簿記検定3級合格を義務づけているところもあります。また、合格していないと昇進試験を受けられない会社があります。

日商簿記検定2級以上では、実務レベルの会計処理能力が問われ、履歴書や面接でアピールするのに十分なレベルです。

日商簿記検定1級合格者には、税理士試験の受験資格が授与されます。税理士試験にチャレンジし、自分で開業するという独立の道も目指すことが可能になります。

試験内容

日商簿記検定それぞれの試験内容について解説します。

簿記初級

資格取得というよりは、修了テストとして研修などで利用されることが多い試験です。就職や転職などの目的で簿記の資格取得を目指す方は、3級から学習を始める方が多くなっています。

簿記初級では、簿記の基本用語や複式簿記の仕組みを理解し、業務に活用できるようになります。

難易度は高くはありませんが、簿記について初めて学ぶ方は、簿記の仕組みや流れをしっかりと理解することが必要です。

原価計算初級

簿記初級と同じように、資格取得というよりは、修了テストとして研修などで利用されることが多い試験です。

原価計算とは、自社の製品・サービスの原価(コスト)と売上、利益を正確に把握できるようになるために必須となる知識・スキルです。

原価計算初級は、製造業のみならず飲食店・小売業・サービス業などの幅広い業種をモデルとしており、簿記の知識がなくても原価計算の基本を学べる特長があります。原価計算の基本用語や原価と利益の関係を分析・理解し、業務に活用できるようになります。

日商簿記3級

基本的な「商業簿記」を修得し、小規模企業における企業活動や会計実務を踏まえ、経理関連書類を適切に処理するために求められるレベルです。

商業簿記とは、購買活動や販売活動など、企業外部との取引を記録・計算する技能であり、関係者(経営管理者・取引先・出資者など)に対し、適切かつ正確に報告するためのものです。

標準学習期間は2カ月前後、標準学習時間は100時間前後といわれています。

仕訳や勘定科目など、簿記特有の用語や仕組みを覚える必要がありますが、独学でも十分合格可能な試験です。

日商簿記2級

高度な「商業簿記」「工業簿記(原価計算を含む)」を修得し、財務諸表の数字から経営内容を把握できるなど、企業活動や会計実務を踏まえ適切に処理や分析するために求められるレベルです。

工業簿記とは製造業を対象とする簿記であり、商業簿記とは異なり、製品の製造過程における会計処理と原価計算が中心です。

標準学習期間は3~4カ月前後、標準学習時間は200~300時間前後といわれています。

商業簿記と工業簿記をバランスよく学習する必要があり、独学での合格のハードルは高くなります。しかし、2級も独学での合格が不可能というレベルではありません。

3級の取得からそれほど期間を空けずに、2級に挑戦する場合には、ある程度の予備知識を有していますのでスムーズに勉強しやすいでしょう。

日商簿記1級

極めて高度な「商業簿記」「会計学」「工業簿記」「原価計算」を修得し、会計基準や会社法、財務諸表等規則などの企業会計に関する法規を踏まえて、経営管理や経営分析するために求められるレベルです。

合格すると税理士試験の受験資格が得られ、公認会計士、税理士などの国家資格への登竜門にもなっています。

標準学習期間は6~9カ月前後、標準学習時間は800~1,000時間前後といわれています。

商業簿記・工業簿記に加え、本格的な原価計算や会計学の習得が必要です。

合格には高度な会計知識を要するため難易度が高く、独学でバランスよくかつ計画的に学習を進めるのは困難だといえる試験です。1級合格のためには、オンライン講座や通学制スクールを利用するのが現実的といえるでしょう。

試験方式

日商簿記検定の試験方式は「ネット試験」と「統一試験」の2種類あり、級によって異なります。それぞれの試験方式について解説します。

簿記初級・原価計算初級

「ネット試験」のみ

商工会議所が認定した、全国各地の「ネット試験施行機関」で実施されます。試験日はネット試験施行機関ごとに異なり、空きがある実施日にいつでも受験可能です。

ネット試験というと、自宅でパソコンを使って受験するイメージを持つかもしれませんが、そうではなく、試験会場に行き、割り当てられたパソコンを使って解答します(自分のパソコンの持ち込みは不可)。インターネットを介して画面上に解答しますので、パソコン操作にも慣れていることが必要です。試験終了と同時に採点と合格判定も行われます。

日商簿記3級・日商簿記2級

「ネット試験」、「統一試験」の希望するどちらかで受験

簿記初級・原価計算初級と同じネット試験のほか、答案用紙に筆記で解答する統一試験が1年度に3回実施されます。統一試験は、パソコン操作にあせることなく筆記で解答できますが、試験日が決まっていて、合格がわかるまでに約2週間かかります。

日商簿記1級

「統一試験のみ」

1級は1年度に2回実施される統一試験のみです。随時受験できるネット試験とは異なり、決まった日しかチャンスがないため、学習スケジュールをしっかり立て体調管理も万全にすることが大切です。また、試験日から合格発表まで約2カ月かかります。

まとめ

日商簿記検定は、受験資格がなく学歴や年齢を問わず何度でも受験することが可能な試験です。簿記を学んでみたいと思われているプレシニアの方は、日商簿記検定合格を目標に学習をはじめてみてはいかがでしょうか。

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