生きがいのために働く高齢者はNG

ーはたらきたいシニアに必要なことは……

やはり専門能力が有ったほうがいいですが、専門能力はあるけど「プラットフォーム能力」がないという人は辛いですね。「プラットフォーム能力」って何かっていうと、先ほど言った「気持ちを切り替えることができる能力」と、あとね「ヒューマンタッチ力」「一人で仕事をやりきる力」なんですよ。つまり若い人と目線をちゃんと合わせて人間関係を作れたり、ちゃんと一兵卒として独立して仕事ができる能力。

ー組織内で働くなら必要な力ですね。

「プラットフォーム能力」があるシニアを言い換えると「かわいい高齢者」といえるかな。

定年後、うまくいっている人とうまくいってない人がいます。以前人事の皆とシニアの人事管理はどうあるべきかについて議論しましたけど、全然答えが出なかった。で、社内でうまくいっているシニアを順に挙げてもらったんです。

そうしたら、メンバーの一人が「このシニア、みんなかわいいですよね」って言うんですよ。なるほど、そうかもしれないということで、もう一度深く分析してみたら、総じて「プラットフォーム能力が高い」というようなことになったのです。

ーなるほど、面白いですね。

「プラットフォーム能力」、つまり「気持ちを切り替える力」と「ヒューマンタッチ力」更に一人で仕事を完遂することができる「おひとり様しごと力」があって、その上に専門能力があれば、活躍できるシニアということになりますね。

ーそういうシニアの方なら企業側のニーズも高いでしょうね。

定年後はなんでもかんでも給料4割減などと一律に下げることは止めたほうがいいですね。シニアになっても「何の仕事を担当するか」で給料を決めるべきです。定年前とほぼ同じ仕事であれば、待遇面など条件もそれほど変わらないようにしないと。そうする企業は増えてきていますが。

勿論、管理職だった場合は責任が減ったり、勤務地の異動が無くなる、長期出張が無くなるなどの変化に応じて賃金が下がるというのはありますがね。

ーなるほど、負担が軽くなった分は少し給与下がるけど、やることは変わっていないのに一気にガクンと落ちるのは嫌ですよね。企業側としても仕事の質が担保されるなら支払いはしますって会社も、きっと一定数以上ありますよね。

シニアになっても戦力として頑張ってもらわないといけないからね。

これからはシニアの戦力化をどんどん進めないといけませんし、シニアパワーを頼みの綱にする会社は山ほど出てくると思いますよ。

今野浩一郎 先生
学習院大学名誉教授/学習院さくらアカデミー長
神奈川大学工学部助手、東京学芸大学教育学部助教授などを経て、1992年より学習院大学経済学部教授。企業の人的資源管理からマクロの雇用問題まで人財に関わる分野を幅広く研究。
「『多様な正社員』の普及・拡大のための有識者懇談会」「長時間労働対策事業検討委員会」座長など数多くの公職を歴任。著書に『高齢社員の人事管理』(中央経済社)など。 学長をつとめる「学習院さくらアカデミー」は、日本の古き良き伝統を継承する雅楽や礼法などの講座をはじめ、教養、語学、趣味、さらには実社会で役に立つ資格や実務講座など、多種多様な講座を開講している。

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