シニアとしての働き方の選択肢

日本の終身雇用制度が変わる

人生100年時代とか定年70歳時代というワードが頻出するようになった現代。長らく続いた終身雇用制度も変化せざるおえない状況に直面しているのです。確かに、大企業に入社したから一生安泰という考えは第4次産業革命が進んでいる現代においては過去の遺物といっても過言ではないでしょう。デジタル技術の進化によって働き方も多様になり、雇用する側も従来のメンバーシップ型雇用からジョブ型雇用を取り入れる企業も増えてきています。要するに、「雇用した人間に仕事をあてる」から、「仕事内容に適した人間を雇用してあてる」時代となってきたわけです。本記事では、改めて、そういった終身雇用の変化の背景や要因を振り返るとともに、シニアになってからの働き方の展望についてまとめてみました。

終身雇用の特徴と限界

終身雇用制度は、一度入社すればほぼ一生涯にわたって同じ企業で働くという安定性を提供してきました。すなわち、安定感という信頼関係でとにかく人材を確保するという、戦後復興の流れを受けての日本固有の雇用形態でした。

しかし、急速な産業構造の変化や経済の不確実性の高まりにより、この制度の限界が顕在化しました。終身雇用制度では雇用される側には安定感がある反面、企業経営においては柔軟性に欠け、さらには労働者自身のスキルアップ意識を妨げる側面も存在していたからです。

全く働いていないわけではないけれども、働きに見合わない高い報酬を受け取っているとして、茹でガエルや妖精さんと揶揄、批判される中高年が増加したのも事実でした。

このように、終身雇用制度のデメリットが顕在し、時代にマッチできなくなったことから「終身雇用制度は崩壊した」という表現が頻出するようになったのです。

企業と労働者の新たな関係性

このような終身雇用の崩壊により、企業と労働者の関係性が変化しているのです。そして、雇用制度と人事評価制度の見直しが企業にとって急務の課題となっています。雇用制度においては、無制約社員としてのメンバーシップ型雇用、制約社員としてのジョブ型雇用の2タイプ。いっぽうで、人事評価制度としては職能資格制度と成果型賃金制度の2タイプ。いずれもメリット、デメリットが存在し、企業側としてもそれぞれをどのように組み合わせるのかを含め、従業員の資質の把握や目標決めの基準の整備、能力向上、発揮のためのシステム構築など多くの課題を抱えています。

いっぽう、雇われる側としては、スキルアップとキャリア形成がますます重要になっています。自身のスキルを継続的に向上させ、多様な仕事に適応できる能力を作り上げていく。すなわち、学び続ける姿勢や新しい知識の獲得が、変化の激しい労働市場で生き抜く鍵となります。

シニアとしての働き方の選択肢

副業を認める企業側も増えているなか、本業を複数持つというパラレルワークというスタイルも登場しています。また、ワーク・ライフ・バランスを考慮したうえで働きたいという価値観も根強く広がりをみせています。

企業側も定年や再雇用の延長によって人材の確保を検討するところ、また、55歳時の給与から毎年2割程度の減額していたものを職能レベルによっては金額を維持を検討するところなど、人事制度の見直しを急いでいる企業も登場しています。

何歳まで働くか、どのように働くかを決めるのは労働者本人の自由。ただ、50歳を過ぎると、就職・転職活動が一気に厳しくなるのは事実です。その年齢層の人たちが、急速なテクノロジーの進化や業界の変化に追いつけるかといった柔軟性や適応力を疑問視されてしまうからです。しかし、日本は生産人口が減少している状況で、人手不足が恒常化しています。ですから、変わらずに学び続け、新しいスキルを獲得していくことで、シニアでの働き方の選択肢も増え、さらに、挑戦できる領域も広がっていくといえるでしょう。

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