介護の壁 第4回 「公的高齢者向け施設」

公的施設のメリットとデメリットとは?

プレシニア、シニアとなっていくと避けては通れない課題である「介護」。前回は高齢者向け施設の民間のものに関しての記事でした。今回は「特養」や「老健」という用語を耳にしたことがある方もいると思いますが、地方自治体や社会福祉法人などの公的機関が運営している公的な高齢者向け施設の概要についてご説明します。

公的施設の一番のメリットは、入居一時金や月額費用が安く設定されていることが挙げられます。公的施設は要介護度が高い人や収入が低い人を重点的に支援することを目的としていることから、地方自治体や社会福祉法人など公的な機関が国からの補助金を受けて運営しています。そのため民間施設に比べて、基本的に入居にかかる費用を抑えることができると言われています。


一方デメリットには、入居するまでの待機期間が長くなる可能性が高いことが挙げられます。特に特別養護老人ホームを希望する場合、住んでいる地域にもよりますが数年単位で待つこともあります。入居できる順番も申込者の緊急度を考慮して考えらえるため、基本的に入居までの期間が予測することができません。どうしても公的施設に入所したい人は、要介護度などの条件がクリアされた時点で、施設によってはとりあえず申し込んでおくこともおすすめです。


また公的施設のデメリットとしては、民間施設と比べると設備が簡素であったり、レクリエーションの種類が少なかったりすることがあります。あくまで公的機関が提供するサービスになるので、余暇活動や生活の質にこだわる人にはあまりおすすめの施設とはいえないでしょう。

目次

公的施設の種類と特徴

公的施設には、介護老人福祉施設・介護老人保健施設・介護医療院・軽費老人ホーム・ケアハウス・養護老人ホームの6種類あります。養護老人ホームは設置する地方自治体の措置によって入居が決まる施設のため、今回は希望して入居することができる5種類の施設の特徴について詳しく解説します。

介護老人福祉施設

介護老人福祉施設とは、特別養護老人ホームのことで、通称「特養」とも呼ばれています。
特別養護老人ホームは老人福祉法第20条の5に定められた施設で、施設サービス計画に基づいて入浴・排泄・食事等の介護や、日常生活の支援、療養上のお世話、機能訓練を受けながら生活を送る、要介護者高齢者のための施設とされています。

入居の対象者は原則として65歳以上または特定疾病が認められた40~64歳までの人で、要介護認定で要介護3以上の認定を受けた人と定められています。また、要介護1・2の認定を受けた人でも、認知症や知的障害、精神障害によって日常生活を送ることが困難な人や、虐待を受けている人、家族の支援がなく介護保険サービスの供給が難しい人などは、地方自治体が認めた場合に限り入居できることもあります。

特別養護老人ホームへの入居は、介護度や家族状況による緊急度が点数化され、それをもとに入居判定委員会において点数が高い順に入居が決定されます。申し込み順ではないため、早く申し込んだからと言って優先的に入居できるものではありません。入居にかかる費用も所得や資産に応じた負担軽減制度が設けられているため、大変人気のある施設と言えるでしょう。入居希望者が多い場合は、入居するまでの待機期間が数年になることもあります。

介護老人保健施設

介護老人保健施設は介護保険法第8条第28項に定められた施設で、通称「老健」とも呼ばれています。施設サービス計画に基づいて、医学的な管理下のもと看護師による健康管理や介護職員による入浴・排泄・食事等の介護や日常生活の支援、理学療法士等によるリハビリテーションや生活訓練を受け、自宅における生活への復帰を目指すことを目的としています。

入居の対象者は、65歳以上または特定疾病が認められた40~64歳までの人で、介護保険の要介護認定において要介護1以上の認定を受け、入院治療が必要なくリハビリテーションを必要とする人とされています。介護老人保健施設は、退院後自宅での生活が難しい場合などに一時的に入居し在宅復帰を目指すことが想定された「中間施設」であるため、基本的に長期間利用することはできません。3カ月程度を目安に在宅復帰を目指すことになることから入居者の回転も速く、公的施設の中では比較的早く入居することができる施設と言えるでしょう。

介護医療院

介護医療院とは、2023年に廃止された介護療養型医療施設に代わり、「住まいと生活を医療が支える新たなモデル」として創設された施設です。長期にわたり療養が必要である者に対して、施設サービス計画に基づいて療養上の管理や看護、医学的管理の下における介護や機能訓練、その他必要な医療並びに日常生活上の世話を行うことを目的としています。医療の必要な要介護高齢者のための長期療養施設であることから、終末期を支えることも介護医療院の重要な役割の一つとされています。

軽費老人ホーム(A・B型)

軽費老人ホームは社会福祉法第65条及び老人福祉法第20条の6に定められた施設で、食事を提供する「A型」と食事を提供しない「B型」、ケアハウスの「C型」に分類されます。低所得の高齢者に対して無料または低額な料金で食事の提供などの日常生活に必要なサポートを提供することを目的としています。A型とB型の入居の対象者は、60歳以上の自立または要介護認定の要支援の人で、一人での生活に不安を感じている人や、身寄りがなく家族の支援が難しい人とされています。

軽費老人ホームは基本的に身の回りのことがある程度できる人に対して生活のサポートをすることを目的としているため、要介護度が上がったり介護が必要になったりした場合は、施設によって特別養護老人ホームや民間施設の介護付有料老人ホームへの切り替えも求められることもあるため、注意しましょう。

A型、B型はともに1990年以降新設されておらず、代わりにできたのがC型です。2008年からは基準をケアハウスに統一し、A型・B型の軽費老人ホームは順次建て替えとなっています。そのため、今後、軽費老人ホームはC型のみとなります。

ケアハウス(C型)

ケアハウスは別名軽費老人ホームC型とも呼ばれている施設で、A型・B型と同様に自立した生活に不安を感じている低所得の高齢者に対して、生活のサポートを提供することを目的としています。ケアハウスの中でも2種類あり、自立した高齢者が対象の「一般型」と、介護が必要な高齢者を対象とした「介護型」の2つに分類されます。それぞれの入居条件は施設によって異なるため、入居を希望する場合は必ず施設に確認すると良いでしょう。

一般型と介護型の違いには、介護が必要になった場合の対応に差があることが挙げられます。一般型のケアハウスの場合は、介護が必要になった時点で退去することを求められますが、介護型のケアハウスの場合は要介護状態になっても住み続けることができます。ただし、介護型の場合は一般型に比べると初期費用や月額費用が高額になるため、注意しましょう。

まとめ:各施設の違い

※要介護度や部屋のタイプ(多床室・個室など)、収入によって異なります

公的施設は、要介護度の高い人や収入に関する問題を抱えている人を支援することを目的としているため、基本的に入居一時金は必要なく、月額費用も民間施設に比べると安く設定されています。ケアハウス以外の施設は入居一時金が不要なため、あらかじめまとまったお金を用意する必要はないので安心です。

また、公的施設は年金額で支払うことができるところも多いことから、希望する人が多いことも特徴です。特に特別養護老人ホームは居住地域によっては数年単位で待つことも考えられるため、少しでも入りたいと考えている人は、とりあえず申し込んでおくと良いでしょう。

関連記事:介護の壁 第3回 「民間高齢者向け施設」

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