フレイル予防

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介護の壁 第7回 フレイル予防とは?

 

歳を重ねても健康で、社会ともつながりつつ家族や友人と楽しく暮らしたい。そのように考えているシニア、プレシニアの方も多いのではないでしょうか。元気な高齢期を過ごすためには、要介護状態とまではいかなくても少し心と身体が弱くなってしまった、フレイル(虚弱)と呼ばれる状態にならないように予防することが大切です。

そこで今回は、要介護状態へと進行するフレイルを予防する方法や改善方法について、詳しく解説します。

フレイルとは

フレイルとは、加齢とともに身体機能と認知機能が低下し、健康な状態と要介護状態の中間にある状態のことを指します。虚弱を意味する「Frailty(フレイルティ)」の日本語訳で、日本老年医学会が2014年に提唱したことで広く知られるようになりました。

フレイルは大きく分けて以下の3つに分類されます。

身体フレイル

日常生活を営むために必要な、動いたり食べたりする身体機能が低下した状態。筋力や足腰の衰え、臓器機能の低下によって引き起こされます。

精神・心理的フレイル

判断力や認知機能の低下、うつ、意欲が低下した状態。定年退職やパートナーなどの喪失によって引き起こされます。

社会的フレイル

加齢による外出の減少や独居などにより、社会とのつながりが希薄になった状態。他者と接する機会が減ったり、経済的な困窮で引きこもりになったりすることによって引き起こされます。

3つのフレイルが連鎖していくことによって、人の自立度の低下は急激に進み、要介護状態へと進んでいくと考えられています。特に高齢者は、加齢とともにフレイルを発症するリスクが高くなりがちです。 しかし、フレイルは早期に発見し対応することができれば、フレイルの状態から健康に近い状態へ改善したり、要介護状態に至る可能性を減らしたりすることができます。そのため、まずはフレイルに対する知識をしっかりと身につけ、予防に努めることが大切と言われています。

フレイルの判断基準

フレイルの基準には様々なものがありますが、日本ではアメリカのLinda Fried(リンダ・フリード)氏が提唱した基準をもとに作成された、日本版フレイル基準(J-CHS基準)を使用しています。日本版フレイル基準(J-CHS基準)には5項目あり、その項目の中で3項目以上が当てはまると「フレイル」、1~2項目が当てはまるとフレイルの前段階に該当する「プレフレイル」、いずれも該当しない場合は健常と判断されます。

1)体重減少:6か月で、2kg以上の(意図しない)体重減少

2)筋力低下:握力:男性<28kg、女性<18kg

3)疲労感:(ここ2週間)わけもなく疲れたような感じがする

4)歩行速度:通常歩行速度<1.0m/秒

5)身体活動量:軽い運動・体操をしていますか? 定期的な運動・スポーツをしていますか? 2つのいずれも「週に1回もしていない」と回答

フレイルの原因とは

フレイルは、加齢に伴う身体的・心理的変化や社会な要因、環境の変化が重なり合うことによって引き起こされます。様々なきっかけが相互に影響し合うことで、本人を徐々にフレイルの状態にし、原因を放置することでより虚弱な状態に陥り、フレイルから要介護状態へと進行していきます。  フレイルの原因となるきっかけは人それぞれ異なりますが、きっかけを見逃すことがないように、本人だけでなく家族など周りの人も気にかけてあげることが大切です。

【フレイルになるきっかけ(原因)の例】

  • 加齢に伴い家の中や外での活動量が減った
  • もの忘れなど認知機能の低下
  • 筋肉量がへり、筋力が低下する(サルコペニア)
  • 歩くスピードが遅くなった
  • ひきこもりがちで他者との関わりが減った
  • 疲れやすくなった
  • 気力がわかない
  • 糖尿病・呼吸器疾患・循環器疾患・関節炎・抑うつなど、日常管理が必要な慢性疾患を罹患した
  • 少しずつ痩せてきた
  • ごはんが食べられなくなってきた
  • 定年退職したことで収入が減った
  • パートナーと死別するなどして、一人暮らしになった

フレイルを予防するためにはどうしたらよい?

フレイルは、自分の置かれている状況や加齢に伴う身体的な衰えと向き合い、予防に取り組むことで防ぐことができます。また、フレイルには「可逆性」という特性があるため、一度フレイル状態になったとしても、生活を見直すことで進行を緩やかにし、健康な状態に戻すことができます。

フレイルの予防として大切なことは、「栄養」「運動」「社会参加」の3の柱です。3つの柱はお互いに影響し合っているため、どれか1つだけ取り組めばよいものではありません。フレイルを予防するためには、今の自分の生活習慣をしっかりと見直した上で、3つの柱をバランスよく組み込んでいくことが大切です。

フレイル予防における3つの柱の詳細は、次のとおりです。

①栄養 

低栄養は、フレイルを引き起こす最大の原因とも言われています。加齢に伴い食が細くなる人も多く、量を十分に食べられなくなったり、口当たりの良いものだけを食べたりして、身体を維持するために必要な栄養素が不足しがちです。特に一人暮らしの高齢者は低栄養に陥るリスクが高く、家族やパートナーと住んでいる人に比べると食事の品数も少なくなりがちで、摂取する食材も偏る傾向にあります。

フレイルを予防するために大切なことは、低栄養による体重減少を防ぐことです。1日3回の食事では、主食・主菜・副菜をそろえた食事を摂ることが大切です。そのため、栄養状態を良好に保つためにも、「さあにぎやか(に)いただく」で評される10品目のうち、毎日7品目以上の食品を食べることを目標にすると良いでしょう。

かな ぶら く ゅうにゅう さい いそう も まご いずせいひん だもの 

食事の中でも特に大切なのは、筋力を維持するために必要なたんぱく質をしっかり摂取することです。65歳以上の人が1日に摂るべきたんぱく質量の目安は、「体重1kgあたり1.0~1.2g以上」が望ましいと言われています。そのため、肉や魚、牛乳、卵、納豆、豆腐など、色々な食品からたんぱく質を摂取することを心がけましょう。魚の缶詰やツナなどを活用したり、豆腐を常備して様々な食材と組み合わせて食べたりするのもおすすめです。

②運動

フレイルを引き起こす筋肉量の減少や歩行速度の低下、活動量の減少は、運動を行うことで予防することができます。フレイル予防に適している運動としては、ウォーキングやプールでの水中歩行などの有酸素運動とストレッチ、筋肉量の増加のための筋力トレーニング、転倒予防や歩行速度向上のためのバランス訓練などがおすすめです。

運動する時間については、厚生労働省の「健康日本21の健康づくりのための身体活動指針(アクティブガイド)」で、65歳以上の場合は1日合計40分を目標に元気に身体を動かすことを推奨しています。ただし、体調が悪い時は決して無理をせず、持病や痛みがある場合は主治医などの専門職に相談した上で運動を行うようにしましょう。また、身体を動かす時間はいきなり増やすのではなく、まずは今よりも10分多く運動をしてみることをおすすめします。

③社会参加

フレイルを予防するためには、「栄養」「運動」の他に、「社会参加」をすることも大切です。高齢になると身体機能の低下から外出がおっくうになったり、パートナーや友人を喪失することによって気力を失ったりと、引きこもりになってしまうことも考えられます。社会とのつながりを保ち続けるためにも、できるだけ用事や楽しみを見つけ、こまめに外出することを心がけましょう。

【社会参加の例】

  • 食材の買い物や病院への通院、近所への散歩にでかける
  • 友人と約束してでかける
  • ゴミ捨てやペットの世話など、家庭内での役割を担う
  • ボランティア活動をする
  • 趣味のサークルに加入する
  • 地域での行事に参加する
  • シルバー人材センターに登録する
  • 地域の見守りパトロールに参加する

介護、看護を理由とする離職者が増加し続けている現在。また、2040年には介護人口1000万人に到達とも予測されていることを考えると、自身の虚弱や介護を予防することは喫緊の社会課題といえるでしょう。

この社会課題と向き合って、全国各地で活動されているフレイルサポーターをご紹介しているサイトはコチラです。

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