カスタマーハラスメント

転ばぬ先の現代学 (1) カスハラ

この企画では検索ワードのトレンドで目立ったものの中から、シニアの皆さんも押さえておくべきものをご紹介していきます。

第1回目の今回は、カスタマーハラスメントを取り上げます。

顧客の理不尽な要求にカスハラ防止条例

東京都が全国で先駆けて条例化を視野に具体的な防止策を検討するというニュースが2月初旬に出たのがきっかけで検索、投稿共に上昇したワードが「カスタマーハラスメント」。

ちなみにハラスメントというと、セクハラ、パワハラが真っ先に頭に浮かぶシニアの方が多いのではないでしょうか。なので、まずはこの二つを先におさらいしたいと思います。

まだまだ軽視されているセクハラ?!

セクシャルハラスメントは男女雇用機会均等法の改正において、1999年に女性労働者に対するセクシュアルハラスメント防止のための配慮を事業主に義務付けが施行されました。つづく2007年に男女労働者へのセクシュアルハラスメント防止のための雇用管理上の措置を事業主に義務付けが施行されました。

事業主が職場における性的な言動に起因する問題に関して雇用管理上講ずべき措置ということで、職場におけるセクシュアルハラスメントの内容・セクシュアルハラスメントがあってはならない旨の方針を明確化し、管理・監督者を含む労働者に周知・啓発すること。また、セクシュアルハラスメントの行為者については、厳正に対処する旨の方針・対処の内容を就業規則等の文書に規定し、管理・監督者を含む労働者に周知・啓発することとしました。

ただ、セクハラに関しては明確さに欠けるという意見が多いのも事実です。

その第一の理由は主観的な要素の存在です。セクハラの判断はしばしば主観的であり、言動や態度の解釈が異なることがあります。同じ言葉や行動でも、個々の感じ方や文脈によってはセクハラと感じられないこともあります。要するに、セクハラはしばしば微妙な境界線に関わるもので、特に言葉やジェスチャーにおいては、発言者の意図や相手の感じ方によって解釈が変わることがあるからです。

また、いっぽうでは、セクハラはしばしば権力関係が絡むことがあり、被害者が上司や権力を持つ相手に対抗することが難しい状況が生まれることがあります。このような状況では、被害者がセクハラを訴えることが抑制されることがあります。被害者はしばしば、報復や仕事の損失などの不安から、自ら声を上げることをためらってしまい、このため、セクハラがはっきりと表面化しづらくなることもあります。

ただ、最近の事例では元陸上自衛官の女性が元上司の3人の男性隊員を訴えて、強制わいせつ罪の判決が出ているように、勇気を持って行動することは大切なことであることが証明されました。もちろん、その逆に男性を陥れて冤罪をでっち上げるという女性もいるので、男性は女性以上にセクハラの事例を認識しておく必要があるでしょう。職場での呼び方の規定も周知・啓発していない会社が多い現状を鑑みると、まだまだセクハラを軽視している風潮は続いているようにも思えます。

パワハラの最悪は戦争?!

厚生労働省が定義しているパワーハラスメントの3要素をご存知ですか?

・職場での優位性を利用して行われる

・業務の適正な範囲を超えて命令や指示が行われる

・身体的・精神的な苦痛を与え就業環境を害する

以上の3つの定義に該当した際、パワハラと見なされます。

さらに、パワーハラスメントに当たりうる6類型としては、身体的攻撃、精神的攻撃、人間関係からの切り離し、過大な要求、過小な要求、個の侵害とされています。ただ、これら6類型が上記の3要素を満たす場合といずれかが該当しない場合などがあり、パワハラもセクハラ同様に明確ではない部分を多分に孕んでいるため、「極めて抽象的な概念で、内包外延とも明確ではない」とする見方もされてしまいます。

しかし、セクハラにしてもパワハラにしても、人格権の侵害であり、故意又は過失によって他人の権利又は法律上保護される利益の侵害にあたる不法行為となるわけです。

立場が優位な者という定義では、会社という枠を超えて国というものにも当てはまるわけで、最近の自民党の裏金問題なども国民の権利を侵害していないのかなぁ……とも。もちろん、独裁者による戦争などという選択は疑問の余地もないですが。

カスタマーハラスメント対策の必要性

東京都が全国で先駆けて条例化と冒頭でお書きしましたが、顧客等からの著しい迷惑行為に関して企業からの相談が急増したことを受けて、2022年に厚生労働省は「カスタマーハラスメント対策企業マニュアル」なるものを作成していました。事前に各企業に調査を実施し、過去3年間でセクハラ、パワハラは減少傾向であったのに対し、カスハラのみが増加傾向にあったということです。

ちなみに、労働者調査においては過去3年間に勤務先でカスハラを一度以上経験した人の割合は15%。ちなみに職場内でのパワハラの31.3%よりは低いものの、セクハラ10.2%よりも高い結果であったのです。

カスハラに関しても他のハラスメント同様に明確な定義はできていません。なぜなら、企業や業界によって顧客への対応基準が異なるからです。ただ、各種調査の結果、企業の現場においては以下のようなものがカスハラであるとしました。

「顧客等からのクレーム・言動のうち、当該クレーム・言動の要求の内容の妥当性に照らして、当該要求を実現するための手段・態様が社会通念上不相当なものであって、当該手段・態様により、労働者の就業環境が害されるもの」

また、このマニュアルでは、要求の内容の妥当性、社会通念上不相当なものとして14の具体例を定義しました。セクハラ、パワハラの内容と重複するものもありますが、カスハラの場合は刑法の強要罪や恐喝罪などの規定に適用できることから、東京都でも条例には違反者の罰則は設けない方向性としています。この記事では、14の具体例を記載はしませんが、いずれにしても、要求の内容の妥当性、社会通念上不相当なことはしないという理性を持ったシニアであれば問題は起こるはずはないので。

今年の1月からTBSの金曜ドラマ枠で放送されていた「不適切にもほどがある!」。ストーリーはコンプライアンスが当たり前の令和の時代に昭和からタイムスリップした中学教師がコンプラ違反に次々に直面するというもの。「不適切」とは何?という問いかけが散りばめられていて、世帯、個人、コア視聴率ともに上位の話題のドラマとなっています。2月16日に放送された第3話では、セクハラに関しての主人公の阿部サダヲのセリフが絶妙と思ってしまいました。セクハラの基準とは「自分の娘にしないこと!」であると。当たり前のことではありますが、思わず、画面に釘付けになっていました。

コンプラにしろ、ハラスメントにしろ、「そもそも論」の考え方をすれば度は超えないはず。確かに、この30年、デジタル社会に急速に変貌を遂げたことで、時代に追い付くことに精一杯で「そもそも論」を忘れた人たちが増えたのかもしれないですね。

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