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老後2,000万円問題の真相 最終回

前回の記事で、「収入を増やす」ことが近道であるとお伝えさせて頂きました。何故必要なのでしょうか? これからの時代を生き抜く為に年金の支給については検討しなければならないからです。

目次

年金の繰り下げ支給

年金支給額を増やす方法として下記の2つが挙げられます。

1)納付額を増額する

2)支給年齢を繰り下げる

まず、1については、厚生年金保険料は収入によって納付額が決められていますので収入を上げる以外増額することはできません。別の方法として個人年金保険やiDeCoに加入することが考えられますが、その分の資金を用意しなければならないことと、積み立て投資同様時間を味方にしなければならず、50代から始めるとしても効果は薄いです。

2については、現在65歳で支給される年金を最大75歳迄繰り下げることができます。1年繰り下げるごとに支給額が8.4%増え、75歳迄繰り下げると84%増額されます。年間支給額120万円(月10万円)のところを75歳迄繰り下げたら年間220万8千円(月18万4千円)になるのです。

年金で賄える方は必要ないですが、そうで無い方にとって繰り下げ支給は必須です。それは以下の理由が挙げられます。

1. いつか働けなくなる日がやってくる

年金だけでは足りず働き続けたとしても限界はやってきます。また働き続けたくても雇ってもらえるところが無ければ働くこともできません。収入が年金のみになる時がやってくるのです。

2. 繰り下げ支給の注意点

長生きをすることで必要金額は増えていき、それを年金で賄えないと辛い日々となってしまいます。仮に多少の貯蓄があったとしても切り崩しながら生活することとなり「貯蓄が尽きてしまう恐怖」と向き合いながら老後の日々を過ごすこととなってしまうのです。

但し、繰り下げ支給を行うことで支給額は増えますが、その分徴収される税金や社会保険料も増えるので繰り下げ分全額は入りません。また65歳以降も働き続けた場合、年金含めた総収入が月額47万円を超えると、超えた分の1/2の金額が厚生年金分としてカットされるということをお忘れなく。

例えば、厚生年金180万円(月15万円)、給与(賞与含む)480万円(月40万円)の場合

(15万円+40万円-47万円)x1/2=4万円のカットとなり、厚生年金は月11万円、年額132万円となります。

繰り下げ支給をする際もこの額が採用されるので元来増額分を180万円で計算されるのが132万円での計算となり繰り下げ分が減ってしまうのです。

因みにこの条件で月収62万円以上になると

(15万円+62万円-47万円)x1/2=15万円と全額カットになり繰り下げ分は0となります。

高収入であるほど年金がカットされてしまう事がありますが、厚生年金は70歳迄保険料を支払うことができるのでその分の支給額が増えますし、そもそも収入が多いので貯蓄や運用に回せる額を増やすことも可能です。該当する人は仕事のやりがいや支出などのバランスを考慮して今後の計画を立てた方がよいでしょう。

年金は最後の収入源です。最低限の生活費を年金で補うことが必須であり、繰り下げ支給は収入を増やしの生活資金を確保するための最後の手段なのです。

繰り下げ支給を実現するためのセカンドキャリア

年金の繰り下げ支給をすることで生活費を確保することを述べさせていただきました。しかし、それは支給期間迄の収入源を確保した上での選択であり、収入を確保するためにセカンドキャリアとしてどうするかを今から考え、行動に移していく必要があります。セカンドキャリアとしての選択肢についていくつか挙げてみます。

1. 現在の職場で働き続ける

「必要とされる人材」であるならば好条件で長く雇ってもらえる場合もあります。現在の職場で実現できるのか検証してみてください。

2. 再就職、転職

再就職には2つのケースがあります

・今まで働いていた業種、職種での再就職

・全く違う職種での再就職(キャリアチェンジ)

どちらを選んでも良いですが、「ご自身の進みたい方向」と「収入の確保」の双方が成立していることが重要です。特に生活の為だけで現在の職に就いている人は今後どの方向に進むのかを今一度考えてみませんか? 場合によっては新たなキャリアを積むために先に転職をすることも選択肢の一つです。

3.「もう1本の柱」をつくる

副業を始めることで、もう1つの収入源を作っていくことです。最初からまとまった収入にはなりませんが、時間をかけて少しずつ積み上げいく。そして、大きくなっていくことで「マイビジネス」となれば本業での収入が減っても補うことができるだけではなく、雇用ではないので年齢問わず収入を得ることもできます。老後も年金+ビジネスとして2つの収入を得ることができるのです。

セカンドキャリアを形成していく為に

老後2,000万円問題を乗り切る為の「資産形成」「セカンドキャリア」についてお伝えさせて頂きました。年金を可能な限り繰り下げ支給を行い、その間の収入をセカンドキャリアとして確立し、平行して投資による資産形成を実施する。そのことで老後にお金に関して苦労することがなくなるのではないでしょうか。ただし、それを実現させるには能力のほか、人間性等のパーソナリティも含めたエンプロイアビリティ(雇用される能力)を高める事が必要であります。そのためには自己投資を行わなければなりません。この場合の投資は「時間」です。以下の事について時間を使ってみて下さい。

1. 健康管理を最優先事項とする

50歳を超えるころから生活習慣病のリスクが高まります。不摂生な生活習慣から起因するものであり、罹ってしまうと仕事が制限され、治療費の出費などで金銭面の負担が増えるだけでなく、日常生活にも影響を及ぼします。つまりその先の人生が台無しになってしまうのです。特に肥満の人はそのリスクが高いです。ダイエットを行うと共に健康診断にて関わる数値を薬ではなく食事、運動を中心とした生活習慣の改善で正常値になるよう努めてください。

2. マネーリテラシーを身に付ける

お金に関する知識を身に付けてください。資産形成をするとなれば必須ですが、他にもお金の勉強をして不動産、保険、ローン、税金等の知識を身に付けることで家計の見直しができるようになります。余分な出費を減らしていくことも必要です。

3. キャリアの棚卸しをする

現在のエンプロイアビリティを知るためにも今までのキャリアの振り返ってみましょう。

その際に以下2つの項目に分けてください。

・外的キャリア:経歴、肩書き、給与、地位等客観的なもの

・内的キャリア:価値観、興味関心、スキル等主観的なもの

棚卸をすることで再確認ができる他、新たな気づきなど見つかることで自分自身の理解が深まります。

4. キャリアのデザインをする

どのようなセカンドキャリアを過ごすのかを計画してみて下さい。その際に気を付けることは「内的キャリア」を重視することです。これまでの実績から「外的キャリア」に固執し、今までと同様のポジションでのキャリアを考える人がいますが、セカンドキャリアにあたって地位や肩書きなどは必要でしょうか? 価値観とやりがいを重視することで心的満足感を得るキャリアをデザインした方が良いかと思います。

5. プラスαを身に付ける

新たなスキルを身に付けることに挑戦してみて下さい。資格を取るのも一つです。「リカレント教育」として、教育機関で学ぶ場合その費用の一部を国から支給してもらえるものもあります。今までのキャリアに新たな上積みすることでエンプロイアビリティを高めることができますし、これまでキャリアを積むことができなかった人はこの先のキャリアを形成する為の武器を手に入れることができます。

6. 新たな「繋がり」をつくる(人、コミュニティ、情報)

今までのご自身になかったものとの繋がりを作ってみて下さい。今までに無かった知識、情報、人脈等を得ることで、今まで思いもしなかった発見やきっかけを得ることがあります。更に自己成長をしている人たちとのコミュニティに入ることや、将来のモデルケースとなるような人との繋がりを作るなど新たな環境へ身を投じることで、思い通りのキャリアに近づいていきます。

以上が自己投資の一例です。もちろん、他にもありますが、大切なのは「健康」と「お金」の管理をした上で「主体性」のある行動をしていくことです。50歳を超える頃になりますと、どうしてのこれまで築いたキャリアや居心地の良い環境に居座ってしまう傾向にあります。新たなことを始めるのに「今さら」と思ってしまうかもしれません。それを将来の為に「今から」に変えて取り組んでみてはいかがでしょうか。

最後に

老後2,000万円問題も含め生きづらい世の中になってしまいました。個人の力でこの世の中を変えることはできません。しかし今からどのような事を行っていくかによってこれらの問題を乗り越えていくことは可能です。また、お金があっても日々病院のベッドの上での生活や、話し相手がいない孤立した生活等ですと寂しい限りです。

「健康」「お金」「仕事」「日常生活」においてバランスの取れた充実な人生を過ごすことができるのかが、その人にとっての「老後2,000万円問題」ではないでしょうか。

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