61歳で自分たちの劇団をスタート

ーパフォーマンス面だけでなく、本格的な舞台を作りあげていますが、劇団の運営状況はどうなのでしょうか。

興行的にはまだヨチヨチ歩きの状態です。劇団最初の公演をいきなり大きなホールでしたのですが、人が入らなくてびっくりしました。高校の卒業公演は大きなホールでやっても、いつも満杯だったからです。当然同じように入ると思ってしまって。もちろん公演として良いものだということもあるのですが、無料ということと自分の子どもが出演していることも大きかったのだと気づきました。義理ではなく、お金をいただいて観に来ていただくことは大変なことなのだと実感しました。

今は小ホールで公演をおこなっていますが、現状も500席が完全に埋まることはありません。それでも「GADSMITH」の公演を楽しみにしてくださる方が徐々に増えてきています。三世代で観にきてくださるお客様もいて、とてもうれしく感じています。

エンターテインメントとして本物をお見せしたいので、照明や音響もプロの実力のある方にお願いしています。また、代表の長澄小鳩の方針で中学生以下は500円、膝にのって観ることができるお子さんは無料にしています。結果として赤字になってしまうこともあります。儲かることは考えていませんが、収支トントンになればいいなとは思っています。

ー劇団の収支以外に、課題となっていることはありますか。

少しずつ固定したお客様は増えてきているのですが、口コミが中心で、なかなか新しいお客様が入ってきません。聞いたこともない劇団の公演にお金を払って観にきていただくのは、とてもハードルが高いのです。いろいろ考えているのですが、これといった打つ手がないのが現状です。

それと、新しいメンバーを受け入れて、若い芽を育てたいとも思っていますが、拠点となる稽古場を持っていないので、それもなかなか難しいのです。何がなんでもGADSMITHの舞台に立ちたいと思う人がいれば、修さんに育てる力はあるのですが。

ー劇団の活動に関連して、新たに始めたことはありますか。

私たちの舞台を観てくれた大学時代の先輩から、最近滑舌が悪くなったというお話を聞き、ストレッチと腹式呼吸の発声を教え始めました。まだ少人数なのですが、今後フレイル予防で、演劇でおこなっているトレーニングを活用するというのは需要がありそうだなと感じています。何しろ、体幹を鍛えるのは発声練習が一番ですから。

ー生涯現役で舞台に立っていそうな予感がしますが、最後に、桃子さんの今後の抱負をお聞かせください。

実は結婚して劇団四季を辞めるときに、浅利慶太さんに「本当は女優になりたかったんじゃないの」と言われました。私は「80歳になったときに、女優になっています」なんて答えたんです。今が、夢を叶えるタイミングだったのかもしれません。痛々しいと思われるのはイヤですが、許される限り舞台に立ち続けたいと思っています。

本物になっていくのは時間がかかるのだと思います。このまま本物を追求していきたい、やればやるほど本物の道が見えてくると感じています。修さんにしても、年齢を経て、見た目に左右されずに、逆にいろいろな役ができるようになってきています。そういう意味で、再び舞台に立つタイミングだったのかもしれません。

それと、やはり「美しい日本語」にはこだわりたいと思っています。芝居をする中で、美しい日本語を広めたいのです。何を言っているかはっきり聞こえる、そして、抑揚があって音楽的、言葉でニュアンスまで伝わるような。言ってみれば、人の心が伝わる日本語です。よく「人の心に絵を描く」というふうに言っています。

劇団を立ち上げて5年たって、ようやく、ミュージカル劇団「GADSMITH」と、てらいなく言えるようになってきました。まず10年やってみようと始めた劇団です。それが、15年、20年と積み重ねていければいいなと思っています。

ミュージカル劇団GADSMITH(ガッドスミス) 
オリジナルミュージカル「リクエストは星の話」についてはコチラ

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