ホームヘルパーこそ高齢者の天職

今回は、訪問介護事業やデイケア事業をおこなっている「愛ネット」をお訪ねし、代表の境野みね子さん(写真・左側)とホームヘルパーとして活躍されている芳尾慈(よしおめぐみ)さん(写真・右側)にお話をうかがいました。

介護職というと3K(きつい・汚い・危険)というイメージがつきまとい、シニアには向かないのではと考えがちですが、お二人から、そんな考えを払拭するようなお話が聞けました。

まずはじめに、ホームヘルパーとして活躍されている芳尾慈(よしおめぐみ)さんのお話からご紹介します。芳尾さんは現在60才で、ホームヘルパー歴4年です。

ホームヘルパーになるまでのお仕事の経歴を教えてください。

青森出身で、大学は東京だったのですが、青森で4年間教員をしていました。その後、結婚して東京に住むようになりました。子育ての大変な時期が終わってから、コンビニ、ホームセンター、グリーンレンタルなどパートとしてずっと働いていました。介護の仕事に就いたのは4年前です。

きっかけは、同居していた義父を半年間介護したことです。夫は介護の仕事をしていて、義父の世話ができたのですが、私は何もできなくて、そのことが心に引っかかっていました。とにかく介護に関して何もできない自分がイヤでした。それで、義父が亡くなった後に、ホームヘルパーの資格を取りました。介護の仕事に就く目的で資格をとったわけではなかったのですが、せっかく資格を取ったのだからと、「愛ネット」に入りました。

ーホームヘルパーになったのは義理のお父様の介護経験が大きかったのですね。

そうですね。それと、義父に介護が必要になった時に、担当者会議というのがあり、家に何人もの方が来てくださいました。一人を支えるのに、ケアマネージャー、デイサービスの管理職、福祉用具の方など、こんなにたくさんの人が関わっているのだなと初めて知りました。一人で生きているとどこかで思い込んでいたのですが、違うのだということを実感し、とても感動しました。それなら、今度は自分が支える側になろうと思いました。そういう点でも、義父の介護経験は私に大きく影響しています。

ーご主人も介護の仕事をされているのですね。

夫はケアマネ修行中で、研修を受けています。先日、夫はケアマネージャー、私は介護福祉士の試験に合格したところです。夫は現在64才で、10年ほど介護の仕事をしています。夫は介護職が天職のようで、イキイキと働いています。症状が重度の方や困難な事例も嬉々としてやっています。

ーホームヘルパーに就いてみての率直な感想をお聞かせください。

芳尾慈(よしおめぐみ)さん

ホームヘルパーになる前は、きつそうな仕事なので、自分には絶対無理だと思っていました。でも、実際ホームへ無ヘルパーになる前は、きつそうな仕事なので、自分には絶対無理だと思っていました。

でも、実際ホームヘルパーになって、一対一でいろいろな方に会ってみるとそんなことは全くありません。むしろ、自分の知らない世界、人生のお話を聞かせていただく機会を得ることができて、すごく楽しく感じています。自分は狭い世界しか知らなかったのだなと改めて感じます。自分の人生は一回だけしかありませんが、ホームヘルパーをしていると、いろいろな方の人生を知ることができて、自分が豊かになります。

私は家事がもともと好きなので、家事周りの仕事も苦になりません。各家ごとに家事のやり方や台所などが違うのも楽しいと感じます。それぞれこだわりがあって、他の方のやり方を知ることで、自分の視野が広がっていきます。

ー芳尾さんの一日の流れを教えてください。

朝会社に出社して、そこから訪問先に行きます。一日3~5軒回ります。私は土日は休んでいます。今、認知症の義母を自宅で介護しています。義母がデイサービスに行っている間に、ホームヘルパーとして働いています。家に帰って、義母に6時に夕飯を食べてもらいます。

ー今は、ご自宅で義理のお母さまを介護されているのですね。

はい、義母は私が帰ってくるのを待っていてくれます。義母は、私の顔を見ると、ご飯をレンジでチンします(笑)。私は料理が好きで、何品か作ると、義母は「ご馳走だね。私は幸せだわ。」と言ってくれます。そんな大したものは作っていないのですけれど。火曜日は半日だけ勤務して、義母を病院に連れて行っています。それ以外に、「あれやった?これやった?」と声掛けなどをしています。

義母の介護は主に夫がやっていて、手が回らないところだけ手を貸しています。夫は、最期まで自宅で義母を看たいと言っています。義母はおとなしいおばあちゃんで、毎日、「幸せだわ。」と言ってくれます。

義母との暮らしは大変なことはありません。普通の暮らしです。以前なら義母の世話にイライラしたかもしれません。でも、介護職に就いて、たくさんの利用者の方を見てきたこともあり、「うちのおばあちゃんは大丈夫。かわいい。」と思えています。

ーホームヘルパーをされていて、大変なことはどのようなことですか。

利用者の方にも自分の親のように接したいと思いますが、なかなかそこまで理解できず、うまく接することができないことがあります。そういう時は、同じ会社の経験豊富な先輩たちにアドバイスをもらっています。

また、ご本人が介護を受け入れてくれない、ご本人の意向とご家族の意向が異なる、ご本人の意向と私たちの意向が異なる、そういうケースでは、どうやって折り合いをつけるか苦労します。

ー逆に、ホームヘルパーをされていて、やりがいを感じるのはどのような時ですか。

やはり、利用者の方に「ありがとう。」と言われた時ですね。「あー、来てくれた。」と待っていてくれるのも嬉しいです。なかなか受け入れてくれなかった利用者の方が、帰り際にぶっきらぼうに「ありがとう」と言ってくれた時などは、すごく嬉しいです。

私には、若い時に教員の仕事を投げ出したという気持ちがあります。今は、ホームヘルパーの資格を取って、もう一回やり直せるチャンスだと思っています。人生100年時代、これから、やり抜くことに挑戦できていると感じています。今はサービス提供責任者になったばかりで、覚えることがたくさんあって大変です。でも、5年後にケアマネージャーの受験資格を得たら、受けてみるかもしれません。

ーあと何年くらい介護の仕事を続けますか。

ここの先輩で80代の方がいます。私の場合、80才までに、あと20年もあります。何の仕事も生涯現役、やるべきことをやり尽くせればいいなと思っています。教員だと体力がついていかないですが、介護の仕事なら生涯現役で続けられそうです。

ー介護の仕事はシニアにお薦めできますか。

お薦めできます。家事をやってきた方なら、ホームヘルパーとしてやらなくてはならない掃除や料理が問題なくできます。介護のことは勉強すればいいですし。私はスタートが56才でしたが、まったく問題ありません。

男性の方にも、介護職はお薦めできます。男性の利用者は、男性の介護者のほうがいいという場合もあります。また、身体の大きな方の移動は、男性の介護者のほうが向いています。男性で家事が苦手な方であっても、今はクックドゥなど便利なものがあります。それでも、利用者の方は温かいものを作ってもらえることに喜んでくれます。場合によっては、スーパーやコンビニの総菜をチンすればいいのです。

定年退職して時間のある方には、是非、介護職をお薦めしたいです。

ー今後、他にやってみたいことはありますか。

やりたいことはたくさんあります。園芸が好きで、「愛ネット」のデイサービスの花壇に野菜を植えています。先日も収穫した里芋で、デイサービスの利用者の方に豚汁をふるまいました。今は、イチゴ、スティックセニョール、スナップエンドウを育てています。

今は休んでいますが、パソコンも習いたいです。生涯勉強、いくつになっても成長していたいと思います。

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