シニアの学び直し(2)

終身雇用制度の功罪?!

シニアとしてのセカンドキャリア。その始まりが満定年の65歳なのか。もしくは、人によっては役職定年を迎える歳が起点となるなど、人によって異なっています。

しかし、セカンドキャリアに対してモヤっとした悩みを抱えている方たちが多いのも事実です。なので、当協会のサイトでは、セカンドキャリアに対する悩みを少しでも緩和していただけるような各種情報をお届けしているわけです。

では、なぜ、モヤっとしてしまうのか。

それは、同一企業でずっと働いてきた方たちならではの共通した悩みともいえるのです。実は、転職経験のある方に対して、1社しか経験していないという方のほうがセカンドキャリアに対してモヤっとしてしまう傾向が強いのです。その理由はいくつかありますが、終身雇用制度の功罪であるとするキャリアコンサルティングの先生もいらっしゃいます。

新卒で就職して、30年以上働いてきた会社を辞めた後のことなど想像もできない。どう取り組めば良いのか、皆目見当も付かない。

実際、退職してからゆっくりと考えれば、という方もいらっしゃいますが、結論を申し上げてしまうと、「もっと早くに考えるべきだった」という反省を述べているシニアの方が多いのです。 そういったことを踏まえ、今回は、同一企業でずっと働いて来られたシニア、働いていらっしゃるプレシニアの方お二人に話を伺いました。お二人ともセカンドキャリア設計のために、学び直しのカリキュラムを提供しているライフシフト大学に通われた経験をお持ちなので、カリキュラムを通じて学べたことなども含めてご紹介します。

退職しても学ぶ姿勢

長谷川さん.1

まず、おひとり目は、昨年12月に朝日新聞社を65歳で定年退職された長谷川智さんです。新卒で入社した後は経済部記者や管理職として活躍されて来られました。60歳前に社内で定年退職後に関するセミナーが実施されたそうですが、ご自身としてはあまり活かせるものではなかったと。また、以前の人事制度では65歳以降も記者ができたが、完全に65歳で終了ということに変更されたことを受けて、これは自力で何とかしていくしかないと、62歳ごろからセカンドキャリアのことを具体的に考え始められたそうです。

「この年齢で同業他社への転職はあり得ないですから、何をしようかと色々な本を読んでみたりしていました。その中で、キャリアコンサルティングの勉強はスキルとして良いかなと思い、昨年、取得しました。ただ、国家資格としての信頼はあっても、人事部勤務の人が多く取るような資格ですから、これだけで収入を得ることは難しいことはわかっていました」

長谷川さんは最終的に、個人事業として文章の書き方を教えるキャリア文章塾と本の執筆、また、セミナーや研修の講師といった方向性でのプランを策定して12月に退職されました。ライフシフト大学という学び直しの場に参加することは退職後に決められたのでした。

「退職したのに学ぶ必要性がある?という声もありますよね。でも、ある程度しっかり勉強して知識や教養を深めたいという思いがありました。それと、以前に面識のあった多摩大学大学院名誉教授の徳岡さんが理事長をされていたので信頼できると思い参加しました」

「60歳定年&老後」という人生観からのライフシフトを行い、長期にわたり現役力を維持し、社会とつながり続けるための総合的なナレッジとスキルを学ぶライフシフト大学。長谷川さんのご自身なりの目的としては、知の再武装、それに、新たなネットワークづくり、この二つを目的に5ヶ月間の講座を学ばれました。

正解の多様性を考える重要性

長谷川さん.2

「日本の場合、正解主義的なスタンスでの学びが主流であったと思います。しかし、日本経済を再生するといいますか、良くしていくためにはイノベーターシップや多様性の理解といったことが重要だと思います。正解は一つという考えではなく、物事の多面性を積極的に理解する必要があります。学び直しという知的な世界に身を置いたことで再認識できたと思っています」

新聞記者の経験を通して築かれてきたリテラシーの高さが随所に感じられる長谷川さん。しかし、他のシニア同様にセカンドキャリアの不安もあると。

「セカンドキャリアに対して不安はありますよ。それに、年金も思ったよりももらえない(笑)。最終的には何とかできるとしても、現時点ではローンも残っているから稼がないといけないというプレッシャーもあります。しかし、人生は不安が付き纏うものですし、ある程度のプレッシャーがあったほうが真剣に取り組むものです。ライフシフト大学のコンセプト<人生100年時代、80歳まで働こう>のように、健康であるうちは働いていたいですね」

不安だといって立ち止まるのではなく、動きながら解決していく。積極的な姿勢が言葉の端々に感じられる長谷川さんは作文塾の運営のほかに、執筆業に関しても既に出版の予定が進んでいるそうです。年内には文章の書き方のノウハウ本を、さらにはビジネスパーソンの教養を深める本も準備しているとのこと。出版されましたら、今度はアクティブシニアとして是非にお話を伺いたいと思います。

次のページでは、定年退職の10年以上前からセカンドキャリアの準備を始められた津村さん(55歳)のお話をご紹介します。

1 2
よかったらシェアして下さい。
  • URLをコピーしました!
  • URLをコピーしました!