北九州で多世代が共生できる社会作り

菊池勇太さんは1989年生まれの33才。現在は生まれ故郷の北九州市門司港で起業、ゲストハウス、飲食店などを運営し幅広く活動されています。菊池さんは、シニアの就業にも関心が高く、シニアの採用に積極的です。特に、ご自身のお母さま(照代さん、71才)を看板娘に据えた「てるちゃんのバナナジュース屋」が話題になっています。

菊池さんに、現在の事業のこと、シニアの就労についてなどのお話をうかがいました。

ーはじめに、菊池さんのこれまでの経歴を教えてください。

北九州市門司区生まれで、22才までそこにいました。北九州市立大学の国際関係学科で途上国の開発支援を専攻しました。卒業して2年間、環境コンサルティング会社で仕事をし、その後、福岡市のマーケティングリサーチ会社に転職、そこで6年間仕事をしていました。2018年、28才のときに地元門司港で合同会社PORTO(ポルト)、阿蘇で二人の知人と合同会社アソウトを設立しました。独立して5年目になります。

ーPORTO(ポルト)ではどのような事業をされているのですか。

ゲストハウスの他、飲食ではキッチンカーでのレモネード屋、バナナジュース屋をやっています。レモネード屋は海峡レモンという活動の出口としてやっています。それ以外に、JR九州とライセンス契約を結び、門司港駅の駅看板をモチーフにしたグッズを作って、門司港駅のファミマやお土産物品売場に卸しています。

グッズは儲かっていますが、レモネード屋はトントン、バナナジュース屋とゲストハウスは赤字です。ゲストハウスや飲食店は、コロナ禍では固定費を回収するのがなかなか厳しいです。

※海峡レモン⇒菊池さんたちが3年前に立ち上げたプロジェクト。関門海峡沿いにレモンを植え、レモンが関門(下関、門司)の特産品となることを目指している。

インスタグラムより

ー菊池さんはそれ以外にもいろいろやっていますよね。

個人としては、2年前から岡野バルブ製造の取締役、大英産業という地元デベロッパーの街づくり事業のアドバイザーをやっています。ネクスコ西日本の音声メディアの仕事もやっています。いつか社会構造を変革したいというヴィジョンがあり、インフラ系の事業には興味をもっていて、そういう視点で電力系の岡野バルブ製造やネクスコの仕事をしています。

大英産業は今後の高齢化に向けてシニア向けの事業にも関心をもっており、今後展開しようとしています。サ高住のようなシニア向け住宅も、介護という機能だけに特化したものではない形にどんどん変わるだろうと思います。例えば、デイケア、リハビリ施設の他、ジム、ラウンジ、保育園なども備えた、多世代共生型のほうが地域との交流が生まれ、豊かに暮らせると思っています。大英産業との仕事ではこういったことを進めており、まだ詳しいことは言えませんが、複数の自治体と組んで官民連携で案件が動いています。

これらの仕事は、個人でやっているとはいえ、大英産業とネクスコの仕事で得た売上はPORTO(ポルト)に入れています。そういえば、3年前に映画も作りましたね。自分でも何屋かわからないです。起業してからは、休む暇もないほど忙しいです。

ー確か、北九州市の移住相談員もやっていましたよね。

はい、北九州市のオンライン移住相談員もやっています。

PORTO(ポルト)を立ち上げてから、門司港にいろいろな人が来るようになってきています。この4年間で若い人が40人位移住してきていますが、そのうち10~15人はPORTO(ポルト)が創出した雇用に関わる移住です。

ー菊池さんが拠点としている北九州市はどのようなところですか。

北九州という街は、人口構成や産業構造からみて、日本の平均値のような街です。日本を象徴する街で、日本の抱えている課題は、北九州市の課題だと言えます。環境先進都市といっていますが、実際は課題先進都市なのです。

高齢化の問題とともに、産業の競争力がなくなっていくという問題が起きています。北九州市は製造業、物流、小売・卸売が中心なのですが、こういった産業は自動化してやがて人が要らなくなります。現状、北九州市は財政破綻しそうな自治体ランキングで京都に次いで、2位です。京都もそうなのですが、産業がないので雇用を生み出す力がなく、法人税が少ないのです。

北九州市が抱える課題を解決することができれば、日本をはじめ課題に直面している先進国の参考事例になると考えています。僕は、地場の企業と組んで解決するアプローチと自力で解決するアプローチと二軸で考えています。

ー地元・北九市の抱える高齢化問題とはどんなことですか。

企業城下町だった時期が長く、自前で雇用を生み出す力がないのです。すでにサラリーマンの人たちは出て行ってしまって、その人たちで成り立っていた商店街の人たちが高齢化しています。つまり、自営業者が多く、年金が少ないのです。その中でも、稼いで逃げ切れた人と逃げ切れなかった人に分かれます。僕の実家は印鑑屋だったので逃げ切れないほうに入ります。でも、息子が7人いるので仕送りで何とかなっていますが・・・。

それはさておき、夫婦で年金10万円、さらに、どちらか一人になってしまうと年金5万円で暮らさないといけない。例えば70代の女性が一人になったら、生活はきついだろうなと思います。若い人は出て行ってしまうので、息子との同居という手段もないのです。

門司港の高齢化率は今40%ですが、2030年には50%を超えます。今後、年金の金額は下がっていくでしょうし、社会保険料は上がっていくでしょう。となると、高齢者が月5~10万円稼げる仕事を作らないと、高齢者は自活していけないということが起きてきます。

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