シニアにとってのリファラル採用とは
シニアの再就職で話題になっているリファラル採用。日本の雇用市場においても広く活用されている採用方法ですが、何それ？という方のためにご説明します。
そもそも、リファラル採用とは、既存の従業員が自身の人脈やネットワークから適切な候補者を推薦する形式の採用手法のことです。推薦された候補者は通常の採用プロセスを経て選考、評価されます。ですから、候補者と推薦者の関係性が濃い縁故採用とは異なり、採用プロセスの透明性や公平性が損なわれる可能性は低いと考えられています。
では、企業側にとって、この採用方法を実施するメリット、デメリットと何か。まずは、メリットから。
企業のリファラル採用のメリット
信頼性と適合性
リファラル採用は、既存の従業員が自身の人脈や知人を推薦することによって行われるため、候補者の信頼性や文化適合性が高い可能性があります。従業員が自分自身の評判をかけて推薦するため、候補者が組織の価値観やビジョンに適合する可能性が高まります。また、既存の従業員が候補者についての情報を持っているため、採用担当者はより適切な判断を下しやすくなります。
効率的な採用プロセス
リファラル採用は、採用プロセスを効率的にすることがあります。従業員からの推薦に基づいて選定された候補者は、既に一定のスクリーニングや評価を通過している可能性が高いため、採用プロセスが迅速に進むことがあります。ただし、在職中である人がほとんどなので、内定から入社までに時間を要することも考えられます。どうしても直ぐに欲しいという状況には対応できないということです。
高品質な候補者
従業員は、自身のネットワークから高品質な候補者を推薦する傾向があります。これは、従業員が自身の評判や信頼を保つために、優れた人材を推薦することが多いためです。従業員が組織に適した人材を推薦することで、組織の競争力が向上し、成功する可能性が高まります。
従業員の満足度向上
リファラル採用は、従業員の関与感と貢献度を向上させる一因となります。従業員が自身のネットワークを通じて新しいメンバーを組織に迎え入れることは、自身の役割感や責任感を高める効果があります。また、リファラル採用が成功した場合、推薦した従業員は誇りを感じ、組織へのロイヤルティが増加するでしょう。これにより、従業員の定着率が向上し、組織の人材継続性に寄与します。
いっぽうで、リファラル採用にもいくつかのデメリットも考えられます。
企業のリファラル採用のデメリット
ダイバーシティの欠如
リファラル採用が主要な採用手法となると、同じネットワークやコミュニティからの候補者が増える傾向があります。これにより、異なるバックグラウンドや視点を持つ候補者が見逃され、組織内のダイバーシティが不足する可能性があります。多様な人材のアイディアや経験が組織にとって重要であるため、ダイバーシティの維持が課題となります。また、従業員のネットワークに依存するため、幅広い候補者を採用する機会が制限されることがあります。特に、組織が特定の業界や領域に偏っている場合、従業員のネットワークも同様に偏ってしまうことにより、多様な人材を見つける難しさも生じることがあります。
採用基準の偏り
リファラル採用が過度に行われると、一部の従業員からの推薦に偏りが生じる可能性もあります。これにより、特定の従業員のネットワークに関連する候補者が優先的に選ばれることがあり、採用基準が曖昧になる可能性があるからです。また、推薦した従業員との関係が採用プロセスに影響を及ぼす可能性もゼロではないため、他の候補者との比較が難しくなることがあります。つまり、推薦した従業員によっては、特定の候補者を支持する一方で、他の候補者に不利な影響を与える可能性も考えられます。結果として、透明性と公平性を維持することが難しくなるおそれもあるということです。
採用コストの上昇
リファラル採用は、一見するとコストを削減できる方法のように思われるかもしれませんが、従業員への報酬や推薦プログラムの運用にかかるコストが増加する可能性があります。また、リファラル採用に失敗した場合には、追加的な採用手続きやトレーニングのコストが発生します。これにより、本来の目的である採用コストの削減が逆に阻害されることもあります。
日本の雇用市場において、リファラル採用は多くのメリットを持ちつつもデメリットもあります。企業側はリファラル採用を活用する際に、これらのメリットとデメリットをバランス良く考慮し、適切なガイドラインやポリシーを策定することが重要になってきます。ダイバーシティの確保や公平性の維持を念頭に置きながら、リファラル採用を効果的に活用し、企業の成長と成功に寄与することが求められているのです。
このように企業側も慎重に行う必要性がありますが、自分のことをよく理解してくれている知人を通じての推薦はシニアの再就職にとって一つの選択肢であります。自身のキャリアの棚卸しをする際に、会社名だけの付き合いではない人が何人いるのかを洗い出してみてはいかがでしょうか。
