シニアが年を重ねていく、その生き方は人により様々です。 仕事や趣味に奥を深めたり、幅を広げたりする方がいる一方で、自由に使える時間をどう過ごそうと悩んでいる方も。
全国レベルのシニアサッカーチームで素晴らしい成績をあげていて、しかも企業人である方がいらっしゃると聞いて、ご自身が経営するコーヒー製造販売会社 株式会社コクテール堂の本社にお訪ねしました。
虎ノ門駅を出るとそこは東京タワーの麓、広い道路に虎ノ門ヒルズや大使館の立ち並ぶ瀟洒な街です。コクテール堂本社の玄関を入ると、出迎えていただいたのは、コクテール堂トレードマークのコーヒーカップを持った紳士の大きな絵と陽に灼けた林道男社長でした。
ーこの印象深い紳士の絵はお店でよくみかけますが、有名画家の作品なのですか?
実は違うのです。コクテール堂コーヒーのイメージをもとに、社内のデザイナーが描いたものです。皆それぞれに優秀な社員なので、あまり外注の必要がなくて。直営店に飾ってある絵も壁に描いた絵も、全部社員が描いたものですよ。
ーコクテール堂についてお話しいただけますか?
父の代で創業してから80年になります。父が若い頃ロシア人よりコーヒーの焙煎法を伝授されたのをきっかけにコーヒーの会社を起こし、それ以来コーヒーの味を追求し続けてきました。その間、コーヒー豆を選ぶ人、焙煎する人、運ぶ人、売る人、コーヒーをたてる人、全員の気持ちが合わないと美味しいコーヒーはできませんから、そんな意味で人に恵まれましたね。
社員は90名ほど、本社と工場と配送センター、またコクテール堂の直営店としては橋本店(イオン橋本店2F)・国分寺店(セレオ国分寺8F)・二子玉川店(二子玉川ライズS.C.タウンフロント6F)・横浜みなとみらい店(MARK ISみなとみらい3F)の4店があり、それぞれ気骨ある社員が働いてくれています。
コーヒー豆は世界中から厳選された高品質の生豆を輸入して、八ヶ岳を見渡せる山梨県韮崎市の生豆熟成工場で熟成焙煎しています。1年以上エイジング(熟成コーヒー:コクテール堂独自製法)させることで、まろやかさの中にコクと透明感があり甘く芳醇なコクテール堂のコーヒーができあがるのです。手がかかりますが、一度飲んだら独自の味と風味が忘れられないと、80年間沢山のお客様に好まれ、有り難いことに若いコーヒーファンも増えているのです。
僕は今70歳ですが「コーヒー業界で注目度世界No.1」の会社になるまで年齢を気にしている暇なんてないのです。とにかく社員が一丸となって味を守り、その社員をとりまとめる僕自身の頭と体の健康を維持しないとね。あ、コクテール堂のコーヒーを飲んでいれば平気かもしれませんが。 (ここで運ばれてきたコーヒーの香りの良さに、まさに空気が変わる気が)
ー現在の社員、また新しく社員を採用するにあたって求めることは何ですか?
1番は、気が利くこと
2番は、パソコンを使いこなせること
3番は、結果を出す人
4番は、助け合うことができる人
です。
ーではシニアが仕事をする上で必要なことは何だと思いますか?
経験を武器にできる人です。うちの会社にも様々な仕事を経験した上で入社してきてくれた社員がいますが、今までの経験が強い武器となり、即戦力となっています。 例えばスーパーの流通を主に仕事にしていた人が転職してきてくれたのですが、食品の流れを良く知っているのはもちろんのこと、お客様に近いところで働いていたのでお客様の求めることがわかるのですよね。
また、うちの配送部門には入社して40年以上になる80歳位の女性もいますが、長年の経験があるので、お客様が好まれる詰め合わせを提案してくれています。 販売部門だけでなく、製造している部門にもいますよ。コーヒー豆を焙煎している工場長は60歳になりますが、コーヒー豆一粒を手にしただけでその豆が育った歴史まで解るのですよ。
食品というのは口にするものですから、その生い立ちから知って、美味しく安全にお客様に好まれる製品としてお届けしないと。だから若い力はもちろん重要なのですが、経験を積んだ社員の力って同じくらい重要だと僕は思います。その人にしかないその人の身に付いた力というのは誰にも真似できるものではないから、コクテール堂は定年後も雇用形態を変えて会社にいてもらうように原則しています。育て上げた社員は会社の財産です。その財産を、年齢を理由に手放すことはできません。
また協調性というか、助け合う力は1+1が2でなく10の力にもなり得ると実感しています。とくに企業において大事なのは人間関係ですから、人と人との関係を円滑にする上でシニアのコミュニケーション能力は重要なのです。
そんな有能な人材を企業として活用していかなければ、もったいないです。