米国カリフォルニアから古民家生活へ

シニアのライフデザインは、その選択の幅が限られているようでもありますが、見方によっては無限大とも言えるのではないでしょうか。これまでと全く違う世界に飛び込むというのも、経験のあるシニアならではの選択だと思います。今回は、全く違う世界に移り住んでイキイキと生活している方をご紹介したいと思います。

奈良県吉野郡川上村高原、霞が立ち上がり山頂がぽっこり顔を出す景色の中、クネクネと続く山道を車で登って行くと井崎正巳さん(72才)が移り住んだ古民家にたどりつきます。立派な瓦屋根と木の色もあせて灰色がかった壁は趣があって、よく手入れされた庭木からは井崎さんの日常生活が垣間見られます。出迎えて下さった健康そうに陽に焼けた井崎さんに、広い土間になった玄関に座りお話を伺いました。

素敵なお住まいですが、いつ頃からこちらにお住まいでしょうか?

今から8年前、64才の時からこの吉野に住んでいます。もとは大阪生まれ、東京育ちです。高校卒業と同時に米国ニューヨークへ渡り、マンハッタンカレッジに入学、公認会計事務所勤務、観光バス会社の経営や日系観光会社の役員など経験した後、2006年位から米国カリフォルニアのシャスタと日本で、アウトドアガイドをするようになりました。加えて二輪での旅が好きなもので日本中をあちこち走るうちに、自家菜園ができるこの吉野の古民家と出会い即刻移住を決めました。

―今はどんなお仕事をなさっているのですか?

カメラマンをやりながら「倭(やまと)塾」と言う名前の小・中学生向けの私塾を運営して2年になります。今の日本を取り巻く外交や環境問題、虚報や誤報、また経済やエネルギーの問題等に対して、問題の本質を見極める事の出来るきちんとした判断力を身につけた、また自分たちの生きている地球というかけがえのない奇跡の星を自覚できる”宇宙的視野”を持った子供達を育てたいと考えて作った塾です。

今夏も、三人の小・中学生が東京から10日間この倭塾に入塾して生活を共にしました。日本という特別な国家の歴史を知るために古墳を見たり神社を参拝したり、山から竹を切って来て流しそうめんを楽しんだり、和紙作りを体験したりしました。食事も同様で、自分で食べる野菜は自分で収穫し、他の買い物もさせて調理までの全てを子供達自身でするようにしました。

三食作るにはかなり時間がかかってしまいましたけれどね。親のありがたさが解るだけでなく、加工食品や添加物の話もしながらの食事作りで、健康は自分の正しい知識で得られるものだと学んでくれたことと思います。

宇宙的視野を持った人間に育って欲しいという面では「英語の日」を設けて全ての会話を英語にしたり、ソーラーカーを作らせて太陽の力を感じたり、地球儀を手作りしたりと、とにかく全て頭とカラダで体験することで学んでもらうことの繰り返しです。

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