自身の癌を乗り越え、患者の就労を支援

ー創業から12期となりました。達成感を教えてください

がん死による国全体の逸失損益は、6.8兆円と言われています。できるだけ合理的にがんを治す、そして仕事と両立させることは、とても大切なことだと、みなさまに理解していただきたい。

2008年東京京大学医療政策人材養成講座4期生となり「がん患者の就労・雇用支援に関する提言」を発表しました。アンケート調査をしてみると、がんにかかった人の4分の3が仕事を辞めたくないと思っているにもかかわらず、3分の1が辞める、4割は収入減、という衝撃的な事実が明らかになりました。

それから2010年にした855人への調査では、個人事業主の方なら仕事の融通もきくのではと思っていたのですが、72%もの方が休業、業務縮小、などに直撃されていました。会社員のほうが守られていたのです。そういう調査を11年積み重ねて、ほかの患者団体や研究機関とも手を携えながら、がんと仕事の両立への施策の必要性を各方面に訴えてきました。

2012年に、がん対策推進基本計画に患者の就労問題という柱が加わり「がんになっても安心して暮らせる社会の構築」と明記されたときには達成感と、「これからだ」という責任感も感じました。

それから毎日のように審議会や、プレゼンに追われるようになりましたが、治療の場に社会保険労務士が入るようになり、ハローワークには「就労ナビゲーター」が派遣されるように、行政が変化してきました。厚労省から、がんと仕事の両立への、さまざまなマニュアルもでています。

ー傷病手当金の改正とは?

2019年2月25日(月)、傷病手当金の改正の国会中継で我々の調査したグラフがテレビで見えたときには、社員みなで「やったあ」‼ 10年間訴え続けてきたので、達成感がありましたね。

さてこの改正とはどういうことか、少し説明しましょう。病を得て手術や治療で仕事を休むときには、健保から傷病手当金が給料の3分の2ぐらい出て療養生活を支えますが、これには1年6ヶ月という期限があります。

がんの場合、一回受け取り闘病し職場復帰、それから何年か元気で仕事して、再発するということがあります。そうなったときに1年6月使い切っていたら、もう手当金は出ないのです。

公務員の場合は通算で受け取れるので、自分で申請を裁量できます。がんや難病の方も通算で取れるようにしてほしいと、10年訴えてきて、2022年1月からやっとそうなります。通算で取れれば、再発や再治療が見込めるときはなるべく短い期間ですまして、職場復帰を急ぐなど、知恵を働かせて人生を守ることができるのです。

これからも相談にきてくださる一人ひとりの「新しい生き方、その展開の物語」つまりナラティブを大切に、それがもっともっと輝くような社会的な提案と実践をしていく。つまりナラティブとエビデンス。それを合言葉に進んでいきます。

参考/ キャンサー・ソリューションズ株式会社 – 「がん罹患と就労」に関する政策提言・課題解決を行うために立ち上げた、社会貢献型の株式会社です。 (cansol.jp)
CSRプロジェクト https://workingsurvivors.org
ABCエピソードバンク https://abc.episodebank.com/index/
がんサバイバーシップシンポジウム2016、厚労科研「がんと就労」研究
がん患者の就労支援等に関する研究 | がん対策情報センター (ncc.go.jp)

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