中小企業でのモノづくりを支援したい

今回のアクティブシニアは、大手機械メーカーに勤務されている木次谷光晴さん。木次谷さんの名刺には「SDGs推進コンサルタント」「2030SDGs公認ファシリテーター」などSDGs関連の資格、「環境カウンセラー」 「エコステージ評価員」など環境関連の資格がずらりと並んでいます。また、プライベートでは、『SDGsゲーム体験会』を実施されています。木次谷さんに、これまでのお仕事のこと、これからのお仕事のこと、SDGsや環境との関わりなど、についてお聞きしました。

―これまでどのようなお仕事をされてきたか、ご経歴をお聞かせください。

大学の工学機械科を出て、新卒で大手機械メーカーに入りました。初めは工場勤務で、生産技術の仕事、また、プロセスの無駄を減らす工程改善の仕事を10年ほど担当していました。それと並行して、ある大型商品の改良設計の仕事に関わりました。その後、主力商品のプロジェクトマネージャーを42才まで10年間やっていました。

2007年に環境部門に異動になりました。2002年に各企業が環境報告書を出すようになり、2006年に「資源有効利用促進法」が施行されるなど、環境に目が向いてきた時期でした。それで、環境部門に引っ張られ、2018年に役職定年になるまで、そこで部長まで務めていました。役職定年後は、実行部隊から離れて、経営企画部でSDGs関連の取りまとめをしています。2020年に定年を迎え、現在は再雇用となり、引き続き同じ仕事をしています。

―仕事が楽しかったのは、どのタイミングですか。

一番楽しかったのは、環境部門に配属になってからの3年間ですかね。リサイクルの新しい仕組みを作ったり、廃棄物処理法の知識を得たりと、新しい分野にチャレンジすることできました。また、プロジェクトリーダーとして、100人程を束ねていた時も面白かったです。さまざまな分野を担当している人達を総合的に管理しながら、仕事を進める役割を担っていました。

―では、役職定年後から今に至るまでのお仕事に対するお気持ちはどのようなものなのでしょうか。

役職定年後の経営企画部の仕事は、具体的なアウトプットがないのです。2~3年先のトレンドを読んで、役員に報告するのが主な仕事です。経産省の外郭団体の方や業界大手の方と関わる機会も多く、世の中がどうなっていくかを考えるのは、面白いのですが、今やらなくてもいい仕事なのです。言ってみれば、長期的なミッションや役割がないのです。現場を動かすことができない今の仕事だと、会社に貢献できていないなと感じてしまいます。

―セカンドキャリアについて、どのような悩みがあったのですか。

セカンドキャリアについてはすごく悩んでいました。実は、定年のタイミングで会社を辞めようと思っていました。なぜなら、会社に残ったら、会社に迷惑だなと思っていました。マネジメント職になってしまったので、設計など現場の仕事はもうできませんし、実際現場には戻してくれません。マネジメント職から現場に戻るのは、その人のプライドもありますし、難しいと思います。

会社を辞めるつもりで、2019年ごろからいろいろ動き始めました。知り合いに心構えを聞いたところ、「60才を過ぎると求人はない」とか、「その年齢になったら人からの紹介以外、仕事は見つからない」といったアドバイスをもらいました。知人を通じて仕事を探そうかと思っていた矢先にコロナ禍になってしまい、あまり動きがとれなくなりました。

いくつかの求人サイトに登録してみたのですが、60才を過ぎると本当に求人がないということを実感しました。求人情報は表面的には年齢制限がないのですが、実際には私にまったく求人はきませんでした。これは無理だなと思いました。考えてみれば、普通は60才で一次定年なのですから、企業は敢えて60才以上の人は取らないだろうなと思います。結局、会社の再雇用制度で、会社に残ることにしました。

―コロナ禍ということもあり、結局、再雇用制度を選ばれたんですね。

再雇用になると給料は、半分以下になってしまうし、正直なところ、やっていられないなという気持ちにもなります。一方で、こんな風に生産性の悪い人間が会社にいるのは良くないなとも思っています。

―65才までは、現在の会社にいるおつもりですか。

うーん、65才までいるかはわかりませんね。下の娘の大学が今年度で終わるので、経済的にはひと段落します。

一方で、会社の規定が変わって、来年度から副業がOKになるという話も出ています。今は仕事以外の活動は、副業にならないようにやっていますが、今後は自由にできるようになるので、それはいいなと思います。

―東京都のセカンドキャリア塾に通われたのはどのような理由からですか。

私は異業種交流会的な勉強会に参加するのが好きで、そのひとつに埼玉の人たちがやっているセカンドライフ研究会というのがあります。そこのメンバーの方に、「セカンドキャリア塾に行ってみたほうがいいよ」と勧められました。

―セカンドキャリア塾に通われてみて、いかがでしたか。

参加して、すごく良かったです。会社でもセカンドキャリアに関するプログラムがありまして、勉強にはなりましたが、社員同士だとざっくばらんに話すことができません。

セカンドキャリア塾に通ったことで、65才以降をどう過ごすか、ヴィジョンが整理できたことは、もちろん良かったのですが、60才を過ぎて新しい友人ができたことが大きいです。その友人たちとは、セカンドキャリアについて率直に話すことができます。セカンドキャリア塾の有志で2カ月に1回集まりがあり、毎回14~15人が参加しています。そこでは、「セカンドキャリアどうする?」「年金をどうする?」という話もできますし、「中央区では日本語教師になるための講座が無料で受けられる」「●●という講座が▲▲である」などといった情報を得ることもできます。

オンラインでも既に2回位、セカンドキャリアについて専門的な話を聞くイベントもやっています。セカンドキャリア塾の同期は沢山いるので、専門家もそこでまかなっているようです。

―プライベートでもSDGsの活動をされていますが、お仕事がきっかけだったのですか。

仕事の関係で、2010年ごろから工業会に、2015年ごろから企業間の研究会(大手企業の異業種交流会のようなものですが)に、顔を出すようになりました。そういった場で、2017年にSDGsに出会いました。

―SDGsを切り口にどのような活動をされているのかお聞かせください。

2019年から、SDGsを題材にしたビジネスゲームを5人の仲間で始めました。2020年からは月1回のペースで大田区の施設を借りて実施しています。

―ビジネスゲームですか・・・聞き馴染みがありませんが。

カードゲームを通して楽しく、SDGsについて理解を深めていくというものです。私がファシリテーターとして、「ある社会課題に対してお金と時間をかけて解決しましょう」というテーマを投げかけて、ゲームを進めていきます。解決する仕方によって、環境や経済、暮らしが良くなったり悪くなったりします。世の中の関係性を知ることで、持続可能性の難しさを体感していきます。

ソフトバンクや日立など社員教育として実施している企業もあります。私は有給休暇をとって、他社の社員教育のサポートをすることもあります。コロナでの行動制限がなくなってきたので、今いる会社に社員教育として実施することを提案しています。それが実現できれば、仕事が楽しくなるのですが。

―今後に向けてどのようなプランをお持ちですか。

基本的に、中小企業の製造事業者を支援したいと思っています。そのために、「簡易EMS」(※詳細は文末に記載)のひとつ一般社団法人エコステージ協会エコステージ評価員という資格を持っています。ISO14001は取得するのに何百万もかかり、認定基準も厳しく中小企業にとってはハードルがとても高いのです。「簡易EMS」というものがあり、こちらは認定基準も緩く会社の規模にもよりますが、50万円以下で取得できます。しかもISO14001と同等に、銀行の融資が受けられるようになったり、地方自治体の入札で加点が付くようになったりします。その「簡易EMS」の導入に関わるのがエコステージ評価員です。

SDGsゲームのファシリテーターの資格とエコステージ評価員の資格を活かしていこうと考えています。企業に興味を持ってもらうために、まず無料でSDGsゲームの体験会を実施し、そこからエコステージ評価員としてコンサルする企業を開拓するという計画です。1社から5万円位もらい、最低で3社と契約できればいいと考えています。65才になった時に、それに加えて年金があれば、十分にやっていけそうです。いずれは、商工会議所やよろず支援拠点(各都道府県にある中小企業・小規模事業者のための経営相談所)に登録して、アプローチする企業を探そうと思っています。

でも、そうやった開拓した企業で最終的にやりたいことは、中小企業のモノづくりに関わることです。今の会社で携わっていたようなモノづくりが大好きなのです。65才になって、一番やりたいことは中小企業のモノづくりへの支援なのです。

―SDGsゲームやエコステージ評価員としての仕事は、モノづくりの仕事につなげるためのきっかけなんですね。でも、中小企業にこだわるのはなぜですか。

環境関連の仕事をしていた時に、中小企業が大変そうだということは痛感していました。製品を納品する際に、エネルギー使用量など必要なデータがあるのですが、中小企業だとエクセルを使いこなせない方もいます。例えば、プロジェクトのチャートの書き方を一緒に作っていくなど、中小企業のお手伝いをしたいと思っています。小さなビジネスでいいので、人に頼られることをやりたい、それが生きがいになると考えています。

―何才位まで仕事をするおつもりですか。

エコステージ協会には、80才位になっても活動している方がいます。私もできる限り、仕事を続けたいと思っています。

※簡易EMSについての詳細は、以下のとおりです。
簡易EMSとは、ISO14001に準拠した中小企業向けの環境マネジメントシステムで(一財)持続性推進機構認証のエコアクション 21、(一社)エコステージ協会認証のエコステージ(ステージ 2 以上の認証)、特定非営利活動法人KES環境機構認証のKES・環境マネジメントシステム・スタンダード(ステップ 2 以上の認証)がある。
エコステージ:https://www.ecostage.org/
エコアクション21:https://www.ea21.jp/
KES:https://www.keskyoto.org/relation/green.html

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