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日本の超高齢化社会で問題視されていることの一つが生産年齢人口(15~64歳)ですね。1995年をピークに減少しており、2050年には5,275万人(2021年から29.2%減)に減少すると予測されているそうです。
一方で、厚生年金の支給年齢の引き上げにより、定年退職後の再雇用が努力義務とされました。これは、減少する生産年齢人口を少しでもリカバリーしていくための施策という役割にもなっています。ただ、再雇用の場合、小規模企業では同じ仕事を担当していますが、従業員規模の大きい企業では同じ会社であっても、これまで通りの仕事を担当させないケースが多いようです。
それまでよりも責任を軽く、雇用形態も嘱託社員・契約社員やパート・アルバイトとして、若手社員のサポートといった役割などで、いわゆる現場に復帰させるということを試みようとしている企業が多く見受けられます。しかし、そのような試みが単純にうまく運ぶわけではないと疑問視している人事部が多いのも事実です。
それは、定年退職を迎えたシニアとZ世代が違いすぎるという不安によるものです。
Z世代とシニアの働き方や価値観の違い
中高年のビジネスマンと若手世代、特にZ世代などの間には、働き方や価値観の違いが存在します。中高年が伝統的な価値観に基づいて働く一方で、若手は柔軟性や新しい働き方を重視する傾向があります。とりわけ、Z世代はデジタルコミュニケーションに慣れ親しんでいますが、シニアには対面や伝統的な手段に価値を見出す人が多くいます。

さらには、現在のZ世代の両親の平均年齢は40代中盤から50代前半。シニアよりも10歳以上も年下の世代が彼らの親であるのです。現在の60代前半は団塊世代で活発だった学生運動も沈静化を迎えた所謂「しらけ世代」と呼ばれていた方々。
Z世代の両親らはバブル経済崩壊の不景気による就職「氷河期世代」。かたや「無気力・無感動・無関心」の三無主義が特徴といわれる世代に対して、「地道で堅実」が特徴とされる世代を親とする子どもたち。違っていても当然と思えてしまいますね。
ただ、この世代論は統計学でいうところの平均値的なもので、全員がそうであるというわけではありません。なので、企業では再雇用も希望者のうち基準を満たした者とするというところが大半を占めているわけです。業種にもよりますが、65歳以降も希望者全員が働くことができるとしているのは平均2割程度の企業しかありません。*1
メンターシッププログラムにおけるシニアの役割
生産年齢人口が減少していくなか、シニアがメンターとして若手世代のキャリアや職務に関するアドバイスやサポートを提供することは、組織内でのスキル向上やキャリアの発展を促進するのに役立ちます。これが、いわゆるメンターシッププログラムというものです。
メンターシッププログラムの成功要因
- 明確な目標設定
- プログラムを開始する際、メンターとメンティーの双方が期待や目標を共有することが重要です。
- 例: メンティーが習得したいスキルや達成したい成果を具体化。
- 相互信頼の構築
- メンターとメンティーの信頼関係が、効果的なコミュニケーションの基盤となります。
- 定期的な対話やオープンなフィードバックの場を設けることが推奨されます。
- 柔軟性のあるプログラム設計
- メンティーのキャリア段階や個々のニーズに応じた柔軟なプログラム設計が効果的です。
- 組織の支援
- メンターシップの成功は、組織全体のサポートやリソース提供によるところが大きいです。
- 例: メンター研修、進捗確認の仕組みの導入。
メンターシッププログラムの効果
- メンターへの利点
- メンター自身も、経験を振り返り、リーダーシップスキルや指導力を向上させる機会を得ます。
- 若手の視点から新たな気づきを得ることで、自身の成長にもつながります。
- 組織全体への影響
- 社員間のつながりが強まり、エンゲージメントや定着率が向上します。
- 組織文化の強化や知識の共有を通じて、企業競争力を高めることが可能です。
多様性とメンターシップ
近年では、多様性のあるメンターシッププログラムが注目されています。たとえば、性別、年齢、国籍などが異なるペアリングによって、多様な視点や価値観が取り入れられ、イノベーションの促進につながるケースが増えています。
具体的な事例
国外企業B社: 多様性を重視したメンターシップにより、女性管理職の割合が10%増加。
国内企業A社: シニア社員をメンターとして、若手社員のリーダーシップ開発プログラムを導入。1年間で対象者の昇進率が30%向上。
メンターシッププログラムは組織によって異なる形態を取りますが、一般的にはメンターとメンティーのペアリング、定期的な面談やワークショップ、目標設定、フィードバックセッションなどが含まれます。効果的なメンターシップは、組織全体の成果や個々のメンバーの発展に寄与します。
このメンターの役割を果たせるシニアとは? 端的に言うと、これまでの経験や実績に囚われないマインドセットが出来ているシニアということになるでしょう。
人によっての感じ方の違いはあるでしょうが、デジタル技術が広く社会に浸透してデジタルライフが当たり前のようになったのはこの10年くらいのことでしょうか。アナログは遠い昔のことのようになった現在。マインドシフトとデジタルリテラシーの強化を行い、いま再び、生産に貢献できる人材となることがシニアには求められているのです。
*1/参考文献:高年齢者の雇用に関する調査(独立行政法人 労働政策研究・研修機構)