曖昧なシニアの定義
政府内で高齢者の年齢の定義を変更しようという話が出ているようですが、シニア、高齢者の定義に関して、医学的、生物学的な根拠はないという前提で、世界保健機関(WHO)では65歳以上を高齢者とすると定義しています。また、健康保険組合では65~74歳までを前期高齢者,75歳以上を後期高齢者としています。さらに、一般的な転職市場では35歳~50代半ばまでがミドル世代、40代~60代をミドルシニア、55歳~60歳以上をシニア世代と呼んでいます。いわゆる団塊ジュニア世代以上がシニア世代となります。ただ、あえて、40代~60代をミドルシニアと定義しているのは不可解ではあり、40代から50代をプレシニアとしたほうがしっくりくる気もしますが……。
高齢者、シニアの定義の変遷
この定義は会社の定年年齢に大きく関係しているものと考えられます。日本で一般的な定年制度が導入されたの1940年代後半。この頃の定年年齢は55歳が一般的でしたが、企業や業種によっては異なる年齢設定が行われていました。そして、1994年に労働基準法が改正され、1998年以降の60歳未満の定年制が原則として違法・無効とされました。これにより、多くの企業で60歳が定年とされ、60歳以上がシニアという認識が一般に定着したものと思われます。
2006年の高年齢者雇用安定法が改正され、定年(65歳未満のものに限る)の定めをしている事業主について、65歳までの定年の引上げ、継続雇用制度の導入または定年の定めの廃止のいずれかの措置(高年齢者雇用確保措置)を講じなければならないこととなりました。企業や業種によっては定年年齢を引き上げたり、再雇用制度を導入するなどの柔軟な雇用形態の導入が広まり始めたのです。最新の報道では、労働力を確保するための定年年齢の引き上げの他に再雇用後の賃金形態の見直しを進めるとした企業もあるような状況となっています。
年齢はただの数字でしかない
最新の総務省の労働力調査では就業者に占める60代以上の比率は2022年に21.6%に達し、1968年以来で最高を更新したそうです。この数値は、65歳以上の人々のうち約7割以上が労働に参加しているというスウェーデンやアイスランドとは比較にはなりませんが、「寝たきり老人」がいないとまでもいわれている北欧の楽園スウェーデンとは国民性も行政のスタンスも大きく異なるので仕方はありません。ただ、日本の労働市場が確実に変化していることの顕著な表れではあるのです。 企業としての新陳代謝を考えての定年という制度の導入検討がなされた時代から、生産人口が減少し、デジタル社会が基盤となった現代。高齢者、シニアという呼び方を含めて再定義を行うべき流れとなっているといえるでしょう。
日本でも、イギリスの女優さんの名言ではないですが「年齢はただの数字(Age is just a number.)」でしかないという状況になりつつあるかと。ましてや、生産人口の減少を補完するためのエイジレス社会となっていくには、何歳だから云々という考え方は弊害になるだけのことです。当協会では働いて収入を得られるうちはシニア、完全に仕事から離れたリタイアされた方たちは高齢者と分類するのも一案かと考えています。そして、長くなる社会人人生をしっかりと歩んでいくために、40歳から50代半ばまでのプレシニアのうちにキャリアパスを設計していく必要はあるでしょう。
関連記事:セカンドキャリアとは