なかなか最初からそんなふうに切り分けて考えられる人も居らっしゃらないですよね?
多くの方は、いざ介護が始まると慌ててしまい、「自分の人生はどうしたいのか?」なんて、すぐには考えられません。
「介護者支援」では、介護者であるご家族に対して「あなた自身はどうしたいですか?」という問いを徹底的に投げかけていきます。
要介護者へのサポート体制は少しずつ整ってきていますが、介護を担う側への支援は、まだ十分に根付いていません。だからこそ、私は「介護者支援」を広めていく役割を担いたいと考えています。
「介護者支援」の活動は、日頃どのように行われているのですか?
企業や自治体向けの研修では、介護者が選べる選択肢の情報をお伝えし、漠然とした不安を軽減させ介護者自身の行動を明確にできるようにと意識しています。
会社としての立ち位置であれば、社員が笑顔で健康に働けることが一番ですよね。介護だからといって構えるのではなく、社員に元気がなければ相談にはのってあげてほしいですね。目の前の社員としっかり向き合うことが重要だと思います。
企業だけでなく、自治体や介護従事者のかたにも研修で伺いますし、また個人のかたでも相談に乗ります。
最後に、読者の皆さんにひと言いただけますか?
いまは雇用も長期化してきていますし、自分のキャリアを節目節目で見直すのを習慣化することをおすすめしたいです。遅くとも45歳前後から考えた方が良いと思いますが、そのなかに「介護」についても考える必要があると思っています。
よく耳にする「役職定年が…」「定年が…」という話は、多くの場合「いま勤めている会社」の中だけの出来事に意識が向いています。けれども、会社を辞めた後の人生はまだまだ長く続きます。
「あなたはこれからどう生きたいですか?」という問いは、単に働き方の話しだけでなく「どこで暮らすのか」「その土地でどんな人とのつながりを持つのか」といったことにも関わってきます。そう考えると、介護は単なる負担や出来事ではなく「自分の人生を見直すきっかけ」にもなり得ますね。定年と同じように、人生を考え直す良い節目になるとも言えます。
私が運営する「ワーク&ケアバランス研究所」では、個人の方からのご相談も受け付けています。介護をきっかけに、これからの暮らし方や働き方を考え直したい方は、ぜひ一度ご覧いただければと思います。

「介護離職が頭をよぎったら整えたい 仕事・家庭・自分自身のこと」
単行本(翔泳社)
「介護が気になるけどキャリアを諦めたくない」
「仕事を辞める前に考えておくべきことって?」
“これから”を決める前に知っておきたいこと!
▼こんな人におすすめ
・仕事も介護も諦めたくない人
・介護が始まると
仕事は続けられないと思っている人
・介護のために仕事を辞めるか悩んでいる人
・介護のために仕事を辞めようと思っている人
・すでに介護を始めていて、
これからに不安を感じている人 など
和氣先生へのインタビューはオンラインで、お忙しい中お時間をいただき取材させていただきました。
お話を聞き進める上で、介護に直面しても「あなたはどう生きたいのか?」という先生の言葉は、我々一人ひとりがこの先に豊かなシニアライフをデザインする上で、最も重要な、外せない考え方だと思います。
「介護離職」は大きな社会課題の一つに挙げられますが、今回のインタビューを通して大きな勇気をいただいた気がしました。(取材・起稿 増田成衛)