ー高齢者の雇用創出に向けて、どのようなことを考えていますか。
高齢者向けの雇用創出は、先ほどいった二軸で考えています。ひとつの方向が、大英産業のような大きな企業で、高齢者向けの仕事を作り出すことです。例えば、大掛かりな不動産開発で出てくる、防災センターの仕事や公園の管理、植物の管理などは高齢者に向いた仕事だと思います。
もうひとつが、自力で雇用を創出することで、個人店であっても高齢者が活躍できる場を作ることです。それが「てるちゃんのバナナジュース屋」です。「てるちゃんのバナナジュース屋」は面白可笑しくやっていますが、高齢者でもできるような難しくない作業工程のものを、高付加価値化することがポイントだと考えています。作業としてシンプルで、スピードも遅いけれど、客単価を上げようということを、クリエイティブの力で工夫しています。
ー高齢者ができる仕事の試みのひとつが「てるちゃんのバナナジュース屋」だったんですね。
でも、店舗商売だけでは難しいだろうと考えています。それで、例えば、お土産の菓子製造はどうかなと思っています。「福岡通りもん」(有名なお土産)ほどの規模になると機械での大量生産になってしまいますので、手作業でできる中規模の菓子製造がいいのではないかと考えています。刺繍やシルクスクリーン印刷なども高齢者に向いているのではないかと思います。
今、人形焼のおじさん版の「おじ焼き」というのを企画しています。父の“まさゆき”などご当地の名物おじさんをモデルにしたものです。うまくいきそうな予感がしています(笑)
この「おじ焼き」やバナナジュース屋はうまくいけば、高齢者雇用のスキームとしてフランチャイズしていくことも想定しています。
ーそれ以外に、どのような仕事が高齢者に向いていると考えていますか。
仕事によって、高齢者に向いているものと向いていないものがあると感じています。すべての作業で高齢者が遅いかというとそうではないと思います。例えば、封入作業のような単純作業は、高齢者のほうが早くできるかもしれません。
5年後位に高齢者の仕事として、アニメーションの仕事を受託することも考えています。若い人が作品を作って、背景のレタッチなどの作業は高齢者がやってもいいのではないかと考えています。複雑な作業は無理だとしても、iPADが進化しているので、塗り絵感覚でできそうです。
ーPORTO(ポルト)で仕事をする高齢者の様子を教えてください。
PORTO(ポルト)はそういう高齢者雇用の実験の場です。ゲストハウスでは67才と76才の人が清掃の仕事をしています。テキパキした人もそうでない人も時給は同じです。高齢者と20代の組み合わせは、おばあちゃんと孫という感じで、いい関係でうまく回ります。高齢者にとっては頼られているという感じがいいようですし、20代の人も高齢者に何か言われてもイヤな感じがしないのです。母の照代は20代の人にツイッターやレジ打ち、ペイペイのやり方を教わっています。教える若い人も高齢者に対しては寛容です。店長は若い人で、スタッフが高齢者という組み合わせでやってみています。多世代のほうがうまくいくなという感触を得ています。
ーPORTO(ポルト)の今後についてお聞かせください。
PORTO(ポルト)は赤字でもいいと思っています。赤字であっても、どんどん店舗を増やしていき、高齢者の雇用を作るのが命題だと考えています。ゲストハウスやジュース屋で、東京など地域外からお金を取ってきて、地域内のお金を増やせればいいのです。
PORTO(ポルト)は赤字でも地域の貿易収支は黒字です。PORTO(ポルト)の場合は、僕が他で稼いだり借りたりしたものが原資になっているのが実態ですが。将来的には、国、行政、また、地域で黒字を出している企業が、高齢者の雇用を創出する部分を担えばいいと考えています。
本当の福祉は何か、ということを考えます。支える側と支えられる側に分かれることに疑問をもっています。母の照代は今でもエネルギーにあふれていて、子どもである僕を支える気持ちでいます。
極論を言えば、国や行政は、社会保障費を増やすより、高齢者の雇用を生み出すことに注力するほうがいいのではないかと思います。高齢者は仕事をすることで、健康で元気に長生きすることができます。また、自分が税金を払い、それで孫世代に貢献していると感じるほうが嬉しいのではないでしょうか。
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