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シニア就労の活路は、『地域で活躍できる場』の創出にあり

前田展弘さんは、(株)ニッセイ基礎研究所 生活研究部ジェロントロジー推進室に上席研究員として所属されています。2009年度より東京大学高齢社会総合研究機構客員研究員として、千葉県柏市の高齢者を対象としたプロジェクト「いきがい就労事業」に携わってこられています。

ジェロントロジー(高齢社会総合研究学)の専門家としてシニアの就労問題に取り組まれている前田展弘さんに、現状と課題、今後に向けての展望などについて、お話をおうかがいしました。

■シニアの就労は必ずしもうまくいっていないように感じますが、実態はどうなのでしょうか。

2009年から柏市で「いきがい就労事業」に携わってきて10年以上経ちます。セカンドライフの空洞化問題(定年を迎えた会社員・公務員等がスムーズにセカンドキャリアに移行できず、自宅にこもりがちな生活を余儀なくする状況)に関して、いろいろやってきましたし、国の政策も進められてきましたが、なかなか解決が難しいというのが現状です。

シニアは大きく3層に分かれます。Ⅰ層は、経営者・大学教授等のハイキャリア、弁護士・会計士・通訳等のスペシャリストなどです。Ⅰ層の人たちは、シニアになっても、企業への派遣の他、起業、顧問業など、仕事とのマッチングがスムーズで、セカンドキャリアへの移行が問題のない人たちです。Ⅲ層は、シニアになっても生計のために働かざるを得ない低・無年金の人たちです。Ⅲ層の人たちは、仕事は限定的ですが、ハローワーク等を通じてなんとか仕事を見つけていただくことが必要です。Ⅱ層がいわゆる普通のシニアです。Ⅱ層の人たちは最もボリュームが多く、例えば、ジェネラリストとして民間企業などで定年まで働いてきた人、あるいは子育てが終わった専業主婦などです。

人手不足の影響もあり、2.5層といったⅢ層に近いところでの求人は増えてきていると認識しています。問題なのは、1.5層から2.4層までの、いわゆるⅡ層のシニアが活躍できる仕事の選択肢がないということです。Ⅱ層のシニアはそこそこ年金があって絶対に働かなくてはならないというわけではありません。この人たちは、頼まれたり、感謝されたりする仕事、自分が役に立っていると実感できる仕事であれば、一歩踏み出して新たな活動(仕事)を開始する傾向が見られます。つまり、彼らが求める仕事と労働市場が求める仕事の間のギャップが大きいのです。その溝を埋めなくてはならないという点で、改善が進みません。

また、企業側は、シニアに対する偏見を払拭できず、シニアよりは若い人、コストの関係から外国人を雇いたいと考えがちです。企業の求人開拓だけでなく、自治体や公共サービスでシニアの雇用に力を入れてきましたが、そこでの動きも広がりません。その理由の一つには、マネジメントする担当者(事務局となる立場の人)が面倒なことと捉えてしまうことがあります。シニアが活躍できる仕事は実は多いのですが、シニアと雇用をマッチングさせて、日々マネジメントすることを誰もやりたがりません。人手が不足していても、シニアを雇って仕事を任せるとなると、雇った側が忙しくなってしまうからです。シニアをうまくマネジメントしながら業務効率も上がったという成功モデルは少なく、世の中がなかなか変わっていかないのです。そういう状態が続いていると思います。

出展:前田展弘氏提供資料

■即戦力となるシニアは、人材を育てる余裕のない中小企業で活躍できる場がありそうですが。

大企業に比べて、中小企業の方がシニアとのマッチングは比較的しやすいと思っています。ただ、仕事面では適応できても、職場の雰囲気に馴染めない、周りの人との人間関係がうまくいかないなど、職場環境面でのマッチングの難しさは依然あると思います。それは、シニアばかりでなく、受け入れる側の問題でもあるのですが。よく言われることですが、年下の上司との関係の問題などもあります。

■企業がシニアを取り込む難しさはどのようなところにあるのでしょうか。

シニアにどのような仕事を求めるのかという問題もあると思います。現役層と同等の労働力をシニアに求めても難しい。例えば、コンビニは絶えず人手不足で求人も多いのですが、あれだけ多様な業務を一人でこなすことをシニアは望みません。シニアの場合は、わかりやすい業務や短時間の業務など負担感の少ない労働の方が、マッチングの可能性は高いと思います。

シニアの就労問題を社会全体の課題として考えるなら、本来的にはシニアと仕事のマッチングは行政が主導してやるべきだと思います。企業側がどうしてもマンパワーとして取り込みたいと考えるならば、割り切ってⅢ層のシニアを取り込むとか・・・。ですが、企業側がもう少し広い視点に立って、シニア向けに業務を絞り込む、創り出すことができれば、楽しく働けるシニアも増えるでしょうし、そのことが社会貢献につながると思います。