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農スクールは「農」と「食」を「職」につなげる、 野菜を育てながら自分も育てるプログラム 前編

農スクールは「農」と「食」を「職」につなげる、野菜を育てながら自分も育てるプログラム 前編

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家の近くを歩いていたら、近所の老齢のご夫婦にお会いしました。手持ち袋から葉付きの大きな大根が覗いています。この坂の下で小さな畑を借りて、野菜を作っているそうです。貸し農園でなく、プランターで野菜作りをしているという方の話もよく耳にします。本日は、神奈川県藤沢市にある「無農薬の野菜つくり体験農園コトモファーム」をお訪ねし、農と職をつなげる特定非営利活動法人農スクール 代表 小島希世子(おじまきよこ)さんと農スクール卒業生の金子誠二さんに「農」にまつわるお話から、これからのシニアについてまでも伺いました。前後編の2回に分けて掲載いたします。


小島さんの現在のお仕事内容をお聞かせいただけますか

はい、2つの団体をしています。

一つめの団体は、株式会社えと菜園(えとなえん)という農業に関する会社です。ここでは3つのことをしています。

① 少量多品種の野菜つくりです。
雑草や虫と一緒に農作物を育てる、雑草昆虫農法*で作っています。農薬や化学肥料を使わず栽培をしています。今作っていますのは主に人参と菊芋で、その他、キャベツ、白菜、大根、カブ、サニーレタス、玉ねぎ、ニンニク、ブロッコリー、ほうれん草などちょこちょこ作っています。
*雑草昆虫農法とは(えと菜園コトモファームnoteより)
「雑草昆虫農法とは、自然にそこに生えてくる雑草や生まれてくる虫を生かした農法。具体的には、雑草や虫を増やし、その中で多品種を栽培するという方法。その結果、生物多様性が高まり、それらの生命体が最終的に土に還り、土壌の有機含有量を増やしてくれるというもの」 

② 「食べる」を届ける オンラインショップです。
熊本で環境配慮型の契約農家さん16軒の農作物を通信販売しています。えと菜園は、農家さんからの商品情報とお客様からの商品発注を受けます。それを農家さんに発注し、農家さんがお客様に直接商品をお届けするというシステムです。

③ 農作業の指導付き体験農園 コトモファームです。
神奈川県藤沢市で活動しています。会員様は、一区画7坪(22㎡)相当の体験エリアで野菜作りをご自身で楽しめます。また、畑の耕し方や種まきから収穫までの野菜作り講習などもさせていただいています。金子さんもここで農作業をされています。

二つめの団体がNPO法人農スクールです。

働きづらさを抱える人と人手不足の農家をつなぐという取り組みです。就農プログラムは、身体とメンタルを整える導入編3ヶ月(春)と農業の基礎的スキルを学ぶ基礎編3ヶ月(夏)週1回2時間のプログラムで就農のへの道に繋げるものです。
詳しくは、『農で輝く! ホームレスや引きこもりが人生を取り戻す奇跡の農園』小島希世子(河出書房新社刊)にも記載しています。

ありがとうございます。詳しいことは後ほどまたお伺いするとして金子さんが、小島さんと出会われたきっかけをお聞かせいただけますか

私は東北大学農学研究科で土壌立地学の修士課程の時に、父の会社が傾き、奨学金をもらってくれと言われて、奨学金を戴き、さらにいよいよ危ないから就職してくれと言われました。慌てて修士2年の5月就活を始めたわけです。土木建築の大成建設の研究所に就職しました。土壌立地学の知識を生かした環境関連の研究開発や事業開発を手掛け、大成建設には24歳から63歳までお世話になりました。この間、いろいろな立場の方々と交流出来ました。この出会いが私の財産となっています。

退職後、長崎大学工学研究科で非常勤講師をしております。ある講演会終了後にアフリカのモザンビークでジャトロファ(和名:ナンヨウアブラギリ)の実からディーゼルエンジンの燃料を作る活動している合田真さんと出会い、“アフリカで農業をしたいと言う人がいるのだ”とfacebookの画面を見せられ、小島さんのことを知りました。
合田さんにすぐ紹介してとメールしました。小島さんは農スクールもしていると言うので、ちょうど農地を買いたいと思っていたときで、農業のことを教えてもらおうと生徒になったわけです。雑草昆虫農法にも関心がありました。毎週火曜日、3ヶ月間みっちり小島さんから教わり、昨年の12月に卒業しました。今は、畑地を3区画借り、腰が痛いと言いながらも野菜作りを楽しんでいます。

 

小島さんの農業が大好きと言われる原点は、子どもの頃の暮らしの中にあったとお聞きしましたが、エピソードなどをお聞かせください

私は熊本県出身で、家族はともに教師の両親と4人の兄弟で、長女です。我が家以外の近隣のほとんどは農家でした。牛や馬等の動物、トラクターなどの重機が羨ましくて仕方がない、触ったりよじ登ったり、田んぼで泥まみれ、野山を駆け巡るおてんばな子どもでした。農家からいただく野菜や米に夢中になりました。わが家はなぜ農家ではないのか、ただただ農家が羨ましかったのです。

そんな時に偶然目にしたテレビ番組で、アフリカの子どもたちが飢餓状態にあることを知り、いたたまれなかったのです。小学校2年生の頃でした。冷蔵庫にふんだんにある野菜をアフリカに送ろうとすると、母に“食べ物を送ることはできない、腐ってしまう、それよりも希世子がアフリカで農業をやればいい”と言われ、それではと勉学に励みました。この頃からアフリカへの思いが根づき始めていたと思います。

バイオテクノロジーを学ぶために農学部を受験しましたが失敗、翌年世界の食糧問題などを勉強できると勧められ慶應義塾大学に入学しました。神奈川県に来て、熊本では見ることのないホームレスの方の存在を知りました。誰も声をかけない、しかし私は声をかけずにはいられなかった。なぜホームレスをしているのかと聞くと、働く場所がないからと。
ここから「農」と「職」を繋げればよい、それは「食」にもつながるとひらめきました。畑をホームレスの方に手伝ってもらえば良い。無謀なことだの声も多くありましたが、多くの人の力、助けを受けながら形として現れてきました。まだまだですが。

 

ホームレスの方をほっておくことができない、私がしなければと言われる小島さんを金子さんは、どのように見られていますか

本当にすごい人です! 農園でも一人ひとりをよく見ている。声をかけている。相手目線で会話ができる人ですよ。感心します。気になる、あるいは気がついたら動いている。なかなかホームレスの人たちに声はかけられません。これは、小島さんが大学で社会心理学を学んだといわれることも大きいと思います。学問と現実社会の差を軽々に受け入れないことが、根底にあるのでしょう。

畑仕事をする金子さん