TOPICS

晴れときどきマーケティング

シニアの再就職にマーケティングの知識があることは、基礎力として役立ちます。それを持てば、職場での会話についていくだけでなく、リードすることもできます。しかも、これは誰でもが持てるもの。知っておいて損はありません。
ここでは、これまでの私の体験で得た、現場感覚のマーケティング論を書いていきます。私なりの解釈ですから、こういう理解もあるのだとエッセイ感覚でお楽しみいただければ幸いです。

 

事業アドバイザー 伊藤 正明氏

 

事業アドバイザー 伊藤 正明

月刊「ESSE」編集長、その後「サンキュ!」「いぬのきもち」「ねこのきもち」などを立ち上げ、WEBサイト、通販、出版、食配、ペット各事業、地域おこしなどの統括事業本部長 執行役員。
定年後フリーで、高齢化社会、新規事業、マーケティングなどのアドバイザー、WEBプロデューサー(このサイトのリニューアルもお手伝いしました)。TVコメンテーター、講演も数々


晴れマno.1
マーケティングとは必勝の武器でなく、
自分でこけないための杖だ

私はプロフィールにも書きましたように、もともと雑誌の編集者でした。高校の時からそうなりたいと思っていたのです。途中から、顧客にもっと貢献するには、雑誌=情報だけでは難しいなと気づきました。まあ、当たり前のことですが。

それで、事業全般に広げるようになったのです。そのとき、マーケティングの勉強を最低限しておこうと考え、基礎の本を何冊か読み、P・F・ドラッカーに出会い集中的に読みました。それからは、いろいろな人の本をそのときどきにですね。ですから、ドラッカーの影響が強いのではないかと思います。もちろん専門家ではありませんので、そのようにお読みください。

 

どの事業も関わっている人にとって、思い入れがあるもの

さて、かつて事業本部の責任者を仰せつかったとき、その本部は赤字で早期に黒字化する必要がありました。中には、既存事業で一定の利益を出しているものがあり、新規事業も可能性がある。ただ、軌道に乗せるのに時間がかかるものがいくつかあったのです。

そこはつらい決断をして、皆さんの努力と忍耐の結果2年で黒字化できました。どの事業も関わっている人にとって、思い入れがあるもの。ご支持いただいている顧客もいらっしゃる。ただ申し訳なく、感謝するしかありません。事業本部全体の売上がある程度ありましたから、施策の自由度の幅を広く持つことができました。

本題です。そのとき、コンサル会社に分析をお願いしました。何社もお付き合いがあったのですが、そこは外資系の優秀なところでした。リポートの特に現状認識がすばらしく、助けていただきました。

そのコンサルの日本法人代表の方が、「飲みませんか」ということで、気楽な呑み屋で囲みました。宴が進みマーケティングについて話題が出たとき、私が「マーケティングって勝つための武器でなく、自分でこけないようにする杖でしょ」と言ったのです。まあ、専門家に対しよく言ったものですが、「その通りです」とすかさず代表が返していただきました。

 

競争こそが市場を健全化させるといっても

企業戦略論は、クラウゼヴィッツの『戦争論』から始まったという人もいて、国と国でなく、企業と企業のいわば戦争のためにそれを応用したというわけです。戦争は、国家間紛争解決の最終手段です。

企業同士はそれを最終でなく、常にし続けていることになるのでしょうか。普段見える多くのビルのフロアで企業間戦争をしているのかと思うと、頭が下がります。競争こそが市場を健全化させるといっても、日々しているほうは大変ですね。

話を戻しましょう。ケンカの勝ち負けは、基本的に人数です。こちらが10人で相手が100人だったら、こちらが負ける。だから最低、仲間を呼んで100:100人にするとか、狭い橋の上で少人数同士の戦いに持ち込むとかすると、どちらが勝つかわからなくなる。相手が大勢でも最初の何回かたたけば、戦意を失うものらしいのです。私には経験がないので、わかりませんが。

ただ、武器を持っていると話が違う。こちらが100人でも武器次第では10人に負けてしまう。逆も同じです。事業ではその武器の基本が、マーケティングです。ですから、マーケティングという武器を持って、最低限、相手と同じ土俵に立ちましょう。ただ、同じ土俵なので勝つ要素にはならない。でも、自分でコケる(負けを自ら引っ張ってくる)ことを避ける、杖にはなるのです。

ですから、マーケティングは必要条件ですが、十分条件にはならないということです。でも、必要条件くらいは身につけておくとだいぶ違います。

 

マーケティングは一子相伝でなく、オープンなもの

つまり、マーケティングは一子相伝でなく、情報がオープンなのできちんと理解すれば、だれもが同じ土俵に立てる。ということは、逆に言うとそれだけで勝ち負けの決め手にはならないということなのです。でも、オウンゴールは避けられる。自分でこけて負けると、心理的に立ち直りが利きませんから。

絶対に負けないのにはどうしたらいいかというと、戦わなければいい。ジリ貧の可能性はありますが、それも一つの選択です。バブル崩壊後、傷を負わなかった企業は何もしなかったところ、と後で言われたりもしましたっけ。でも、戦略的にそうした企業がどれだけあったかは疑問ですが。

 

自社資源という別の武器が必要

さて、ではどうしたら勝てるかというと、別の武器が必要ですね。それは自社資源です。よくいわれる、人、モノ、カネ、それと時間ですね。情報や知財はモノに入れます。

時間は皆に共通のように思われますが、国内なら8時間とか10時間ですが、実はグローバル化の今、世界中のどこかが昼で24時間使えるわけです。まあ、これが企業間競争の激しくなった理由の一つでもあるのですが。

では、それらの武器をたくさん持っている大企業がいつも勝つかというと、そうでないことがある。それがあるから、時代はこのように変化し続けるのでしょう。GAFAが、Apple以外すべて30年も歴史がないことからみてもわかります。

Appleといえば、40年近く前、九段の日本本社を訪ね、発売前の初代Macintosh、いまのMacですね、を見させていただいたことがあります。そのとき、これがマウスというものですと紹介されましたっけ。懐かし。今、ノートPCではマウスすら使わないですものね。

さてさて、話を戻しましょう。よく、脱線しますな_(._.)_

土俵をどこに設定するかが、結構大切です。できれば、自分の作った土俵がいい。それ次第で、局地戦なら小が大に勝つことも可能です。しかも、自社資源を自分で過大評価する傾向がそもそも企業にはある。そして、それこそがよくある敗因だったりもする。大企業のその隙を突くのです。やはり自社資源の評価は、他人の目を入れることが重要だとつくづく感じますね。

善かれ悪しかれ、事業は人間がするものということです。できれば人間同士、誰しも戦いたくはないでしょうけどね。この先は、また別の機会があれば。

*シニアに求められるものは、経験から生まれ出る基礎力ではないでしょうか。応用力は、現役のほうが強い。なぜか。時代がかなりのスピードで変化しているので、実務から少しでも離れたシニアにはついていけないからです。ですから、無理せず基本問題についてアドバイスする。その一つに、マーケティング力が必要と言えます。

現場では応用に走ると隘路に入り、基礎を忘れることがよくあるものなのですね。私も経験あります。人に指摘され、ハッとしたことが。そこからまた、新しい展開が始まったりもしました。大所高所から見てください、と言われることがありますよね。それって基礎力のことではないでしょうか。

 


撮影・文:伊藤 正明