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農スクールは「農」と「食」を「職」につなげる、 野菜を育てながら自分も育てるプログラム 後編

農スクールは「農」と「食」を「職」につなげる、野菜を育てながら自分も育てるプログラム 後編 ー(1)

家の近くを歩いていたら、近所の老齢のご夫婦にお会いしました。手持ち袋から葉付きの大きな大根が覗いています。この坂の下で小さな畑を借りて、野菜を作っているそうです。貸し農園でなく、プランターで野菜作りをしているという方の話もよく耳にします。本日は、神奈川県藤沢市にある「無農薬の野菜つくり体験農園コトモファーム」をお訪ねし、農と職をつなげる特定非営利活動法人農スクール 代表 小島希世子(おじまきよこ)さんと農スクール卒業生の金子誠二さんに「農」にまつわるお話から、これからのシニアについてまでも伺いました。
今回は後編になります。前編は先週(1/27)掲載の記事をご覧ください。


(前編の続き)

金子さんは、小島さんの取り組みをご覧になっていてどのように思われますか

まったく、偉いなぁといつも思います。感心してみていますよ。観察しているわけではないんだけれど、いつも近くにいて一言かけられる、中々できないことです。自然にできるのが素晴らしい、ご両親がそういう教育をしたのかもしれないね。

小島さんは、どんな立場の人にでも対等の目線で会話ができる人なのです。まだここに来て1年ちょっとですが、小島さんから教えられることが多いです。 

金子さんは、そのように言われていますが、小島さんはいかがですか

そんなことありません、金子さんから色々と教えてもらっています。土壌学やバイオについての情報もたくさん。大学で講座を持たれたり、会社の役員をされていたりですごい方なんです。でも、謙虚、腰が低いです。(金子さん:いやいやそこは女房にヒヤリングしたほうがいいよ・笑)それに、言いたいことがきちんと言える、きついことでも上手に言える。言うべきことが言える人は、本当に優しさがあるのだと思います。 

金子さんは、会社生活を終えて農業をされてから小島さんが言われるように謙虚になられたのですか

いやー、会社には当然常にお金がまとわりついているのです。農業は、そこがない。そこがいいのです。自然と向き合うと自然とそう言う風に見えるのでしょうかね。

農業ってアグリカルチャーといいます。本当はアクアカルチャーが語源と聞いていますが、私はアグリー、カルチャーと勝手に解釈しています。この植物食べられますか、この種子栽培できますか、ここの土地を耕していいですか、“もちろん”とアグリー、同意する、賛同を得てから始めるものなのですね、お金じゃないのです。長年かけて人間が試し、その結果をまた後世の人間が活用、皆さんが同意しなければ今に残っていない。それが農業の本質と思います。 

就農スクールの取り組みは、体験農園でも感じてもらえることでしょうか

野菜を育て上げる成功体験であったり、青空の下での共同作業であったり、色々な生き物がいるので生きていることが実感できる。農業を通じて人が野菜を育てながら自分自身を育てるのを活用したのが、農スクールのプログラムです。ですので、体験農園にご来園される方たちも同じような経験を得られると思います。

生きている本人たちが自分の力で自分を変えていく、それによって本人たちの人生が変わっていく。私たちが何かをするのではなく、自分の力でする。
自分を再生する力は、みんな持っている。しかし自信がない、まだ眠っているなどでうまく(能力を)活用できない、すべての方が生まれ持っています。本人が引き出す環境を私たちは作っているだけです。私は、環境作りは得意な方だと思います。

農スクールの卒業生がしている農園に、農スクール生が見に行ったり、手伝ったりもしています。いまその循環が、うまく回りだしています。 

農スクールで就農プログラムを実施されていて感じられることは、どのようなことでしょうか

 
特に働きづらさ、生きづらさを抱えてここにいらっしゃる方は、最初は本当に辛い。苦しい思いでここにやって来られるわけですね。自分から来られる方もいます。もう本当に苦しいんだろうなということが、わかります。

でも、苦しい顔をしてもまたやって来られるんです。それでも立ち向かっていかれる姿にすごく頼もしく尊敬できて、元気や力をもらっているのです。人は必ず再生する力を兼ね備えている、どなたでも。
その姿を見ることができることが、私の力になっていると思います。生きているということが実感できると言ってもいいでしょう。