ノジマ、80歳雇用上限撤廃には、 そこに至る理由があった

ノジマ、80歳雇用上限撤廃には、
そこに至る理由があった(1)
“ノジマ、80歳雇用上限を撤廃”のニュースが駆け巡った。65歳とか70歳でなく80歳?これは聞きにいかねばと、横浜に伺った。横浜駅上の高層ビルの最上階にある本社から、港や横浜ベイブリッジが良く見える。人事総務部広報リーダーの守谷美穂さん(写真右)と広報担当の中村ゆりさん(左)にご対応いただいた。
(株)ノジマ
首都圏でのデジタル家電専門店運営事業、全国でのキャリアショップ運営事業、インターネット事業、海外での店舗運営事業を展開。お客様のスマートライフへの“身近な相談員”として、新しい価値を提供できるトータルソリューション企業への進化を目指している。
東証1部上場 代表執行役 社長 野島廣司 設立 昭和37年4月
従業員数 連結 10,937名(2021年3月末時点)
2021年3月期 売上高5,233億円 営業利益338億円
お忙しいところ、ありがとうございます。反響、すごかったのではないですか?
はい、私たち社内ではまさかこんな反響になるとは思いませんでした。こういう言い方は何ですが、感覚として普通のことだったからです。シニアの方がいつも職場に一緒にいるという感覚が。
2013年4月に正社員の定年を60歳から65歳にし、20年7月に定年後の再雇用を80歳までにしました。そして、この10月に80歳を迎えた方からさらに延長の希望があり、健康状態や勤務状況も鑑みた上で、80歳を超えても雇用延長することにしました。
社内報で、シニアの方の座談会をしたのです。それを社長が読まれて、シニアの方々がイキイキしているのがとてもうれしいと。実はそれまで、シニアの雇用制度について明確な規定はなかったのです。何歳に設定するか悩んだのですが、すでに78歳の方が2名いらしたこともあり、80歳までにしようと。それが去年の7月、そうしたら、今年になって80歳の方がもっと働きたいと。健康状態も勤務状況も問題ないということで規定を超えてですが、OKしました。
この方は女性で、“みんなにとってのおばあちゃん”なのです。バックヤードで入荷商品の仕分けなどをされています。2012年入社ですから、そうですね、71歳での入社ですね。急に衰えるわけでもないので、延長に関して特別な反対意見は出なかったですね。
もともとシニアの方が多いのですか
最近新卒を多く採用させていただいていますから、シニア比率はそんなに高くはないです。従業員の平均年齢も30歳くらいですし。通年採用もしていて、社員での採用もアルバイトでの採用もあります。
シニアと若手の別をとくに意識はしていません。50・60代の採用もあります。人として見ているのです。現場でシニアがいっしょに働いているのが当たり前ですから、80歳にした時も職場では“ああ、したのね”くらいの軽い反応でしたね。ただ、規定にしたことで安心感は出たのではないでしょうか。努力していれば、80歳過ぎても職はあるのだと。
シニアの方が近くにいると、上司と違った相談相手ができて安心感がある、勉強になると若手は言います。若手のメンタル的にも、いい効果ですね。シニアの方々も、若い気持ちでいられると、これも好評です。仕事ではありませんが、シニアの方が若手にゴルフを教えたりもしています。
社長は、「シニアの方々が活躍できる場所を提供したい。好きな仕事を続けることは、健康でいることにもつながる」と、常々話します。
パソコン担当のシニアもおりますし、どんな年齢になってもスキルは対応できるものです。現場では全員、ipadを持って仕事をしています。苦手な人には、得意な人がフォローしています。年齢関係なくフォローしあっていますね。
それはなにか理由があるのですか
うちは他の家電量販店と違って、“コンサルティングセールス”が特徴なのです。つまり、家電メーカーからの派遣スタッフがいない、全員ノジマの自社雇用の従業員です。だから、メーカーに関わらず、お客様のニーズに合った商品を提案できます。そのためには日頃から商品知識を身につけることが必要ですから、シニアも若手も関係なく現場で教えあって仕事をしている。日常的に関係が近いのですね。スタッフ間のフォローは当たり前なのです。
ああ、力仕事はシニアには難しいかもしれないですね。でも、人それぞれ強みがあるので、それでいいのではないでしょうか。
中途採用も専門知識があるかとかでは見ません。物差しは、それではないのです。では何で見るのかというと、今後努力できるかどうかです。今後の伸びしろ期待ですね。人として向き合って、前向きに努力できそうなら採用です。シニアも同じです。
今回の社外からの反響で、改めてノジマの社風を再認識したくらいです。創業時から組織が大きくなっても変わらないノジマの文化のようです。別の話ですが、先日、アルバイトから役員になった人は、34歳の女性です。石原という者なのですが、社内では“ああ、石原さん、役員になったんだね” というような反応でしたから。性別も年齢も雇用形態も関係ない。
若手もシニアも年齢を関係なく見る。それは社長の方針なのでしょうか
そうですね。“エースコンサルタント”という役職があるのですが、言葉のまま、現場のエースです。その昇格基準は、販売成績もありますが、周りにどんないい影響を与えるかを問います。こんな人になりたいと思える人か、後輩を育てているか。360度評価(上司、同僚、後輩からの評価と本人の自己評価)もしています。
ノルマもありませんし。他の社でそのままやろうとしても難しいでしょうか。制度というより文化なのかもしれません。社長は、「数字を作ろうとしてはいけない、お客様に尽くす、お客様から選ばれる人には数字がついてくる」と言います。“自分だけできればいい”という人に、良い評価はつきません。