今日は「働きたいシニアと、噛み合わない企業」について書きたいと思います。
現在は、高齢者雇用安定法にもとづき、65歳までの「高齢者雇用確保措置」が企業に義務つけられています。
分かりやすくいうと企業は
①65歳までの定年の引上げ
②継続雇用制度の導入
③定年制度そのものを廃止
のいずれかが義務付けられているということです。
また政府はいま、70歳までの就業機会の確保について法改正を検討しています。
内容は前述の①~③に加え
④他企業での継続雇用の確保
⑤本人との業務委託契約
⑥社会貢献活動へ有償で従事出来る制度敷設
などが盛り込まれています。
シニアの活躍の機会が拡大することになりますが、企業にとっては雇用するシニアをどう戦力として活用していくのかが大きな課題になります。
起きるミスマッチ
シニアの就労意欲はというと、「70までは働きたい」「働けるうちはいつまでも働きたい」という方が80%以上というアンケート結果が出ています。
働きたい理由の一番は「経済的理由」で、昨年の「老後2000万円問題」は記憶に新しいところですね。
このように、政府の方向性とシニアのニーズは合致しているにも関わらず、実際にシニアから聞こえてくる声は「求人が無い」「年齢でハネられる」「面接してもらえない」などが多いのも確かです。
職種を選ばなければ求人はあるようですが、多くは警備や清掃、販売などの仕事が殆ど。「これまでのキャリアや知見、人脈を活かした仕事がしたい」「週に3日程度働きたい」「出来るだけ自宅から通勤しやすいところが良い」「給与は・・・」と条件を付けていくと、希望に見合う求人は全く見当たらなくなります。
では、企業が高齢者雇用に消極的かというと、そうでもありません。以前は消極的な企業も多かったのですが、人材不足の影響でそういった企業は徐々にですが少なくなってきています。
「あしたのチーム」という企業が2019年におこなった全国の中小企業の経営者300名を対象にしたアンケートでは、「シニア人材を採用したい」と答えた企業が都市部で51.4%、地方で55.3%と、いずれも半数以上の中小企業がシニア人材に期待を寄せています。
では何故、このようなミスマッチが起きているのでしょうか。
噛み合わない企業とシニア
実は「シニア人材を採用したい」と考えている中小企業の70%が「即戦力」としてのシニアの働きを期待しています。
となると「週に3日程度」「自宅から近くで」という方々は、企業側からみれば「即戦力」とは捉えづらい筈です。
ただでさえ「生産性向上」という風潮の中、戦力になるのかどうかが分からない人に手を出しづらいのです。
企業はシニアに対して「不安」も感じています。①健康状態や体力的な不安②親や伴侶の介護による突然の離職に対する不安③雇用者としての安全配慮上の不安④待遇や評価制度上の不安 などがそれです。
中小企業の経営者は、仮に「この人いいな」「即戦力として活躍してもらえるかも」と思えるシニアに出会ったとしても、「週に3日程度で」「自宅から通いやすければ」と言われてしまうと、期待よりも不安が勝ってしまって、結局採用とはなりません。
このように、シニアの「働きたい」と企業の「働いてもらいたい」が根本的に噛み合っていないことも、実際には多いものです。