声をつかった健康レッスン「スポーツボイス」にシニアも注目

スポーツボイス 開発者 東 哲一郎(ひがし てついちろう)さん
GOLDWAXのヴォーカリストとして「ダウンタウンDX」オープニングテーマ『カルシウムが足りない』でデビュー。CMソング、ラジオパーソナリティなども。2006年にスポーツボイスを開発して、全国の施設で指導の現場に立ちながら、ヴォーカリストの活動も精力的にこなす。
(2021年7月2日 文責・撮影 伊藤正明)
「スポーツボイス」という、皆で体を動かしながら大きく声を出す、いや歌うエクササイズがあって、
松本市や多くの自治体が採用したと話題になっていました。
それがシニアの健康だけでなく、生きがいづくりにもつながるという。
どんなもので、新型コロナ下でいまどのように展開されているのだろうと、東京のスタジオにお訪ねしました。
健康プログラムを創作
マイケル・ジャクソンからの発想
「お疲れさまでした(インタビューの前に生徒さんたちのためのリモートレッスンがあったのです)」
「健康寿命延伸都市」松本市でやられていたのですよね」
そうです。松本市と第一興商さんとで「スポーツボイス大学院」というプログラムを1期半年、3年間やらせていただきました。最後に、多くの観衆を前にしたステージでの発表会も。
男性ばかり100人の生徒さんだったのですが、そのあと信州大学人文学部がされたアンケートでは、「こもりがちだったが外へ出て友人と遊びに行くようになった」「いろいろなことに自信がついた」「大きな声を思いきり出せることが生きがい」などの声をいただきました。(注 新型コロナウイルスの前のお話です)。
普段の生徒さんには女性が多いので、新しい気づきもいただきました。
「そもそもスポーツボイスとは、どんなものですか」
「声をつかった健康エクササイズ」と言っています。
私がロサンゼルスで、マイケル・ジャクソンのチームとレコーディングをしたとき、みんなの声がとてもすごい。全然違うのです。ショックを受けた。自分の知っているボイス・トレーニング、「ラ・ララララ~」ではないのです。全身を大きく使って歌っている。
日本に帰ってきてフィットネスクラブの人に言われた、こっちでもやってくださいと。歌は才能でなく、トレーニングで育つものと改めて気づきました。向こうでは音楽なしでやっているのですが、日本の人々の場合、音楽なしでは飽きてしまうでしょう。長い時間できるように、音楽とエクササイズを合わせました。
声帯まわりを鍛え、
シニアの誤嚥性肺炎予防に
「大きな声を出すというのは健康にいいですものね。それ以外にシニアにとっては」
免疫力アップやストレス軽減と、なにより誤嚥性肺炎予防ですね。声帯まわりの筋肉を鍛えることで機能性向上につながる。声帯は声を出すという機能と食べ物や水が入らないようにする機能、それにはまわりの筋肉を鍛えることが大切です。
とくに裏声。好きな歌を裏声で歌う。声帯のストレッチになります。裏声を出すことは重要です。
声帯まわりから、鍛えるのは簡単です。太ももなどは大きいから大変ですけどね。
「先ほどのレッスンを見ているとハードに思えましたが」
エクササイズはハードだと思います。だからしんどいときは休んでねと。
よくシニア向けに楽にしました、とかあるでしょう。シニアをバカにしてはいけません。内容は同じで、辛ければ休む。
これからの高齢者事業はそうでなければいけない。ただ、膝や腰、股関節に負担をかける運動はしません。
スポーツボイスの流れは、リズムに合わせてストレッチ(ウォーミングアップ)→腹式呼吸の習得(ブレスコントロール)→喉まわりの筋肉トレーニング(ボーカルストレッチ)→心肺機能などの強化(ダイナミックボイス)→名曲を母音で歌唱(ボーカライズ)になります。
声に自信が出ないと自分に自信が持てません。皆さん、リタイアするとなぜか自ら引いていってしまう。体力も脳力も余っているのに。
「シニアが若い人を引っ張らないと」そうレッスンごとに話したら、皆さんヤル気が出てきた。

団体は迫力が違うし、
友人もできる
「松本市では団体でしたが、レッスンのように個人でもいいのですよね」
そうですが、できれば最初は団体でしたほうがいい。
団体でやって大きな声を出す。部屋の空気をみんなで振るわせたほうが、迫力が出る。振動量が違います。
結構感動するものです。それに友人もできますし。
「ディレクター制度があって、多くの人の健康支援をしているのですよね」
始めるのは団体がいいのですが、上達するにはやはり個人です。上達して、ディレクターになる。人に伝えることで、より理解が深まる。
ディレクター制度には3つあるのですが、シニアの方には「ディレクターB」という資格を用意しています。これは、やはりトレーニング自体はハードなので、自分で体操しながら教えるのは長い時間続かない。
そこでビデオ映像を使って指導する資格です。レッスンで自分が健康になるし、資格がほかの方の健康にも役立つということですね。
松本でも3年間プログラムをした後、50人ほどが指導する立場になった。ホームや幼稚園でビデオを見ながら教えているそうです。
全国に広がっていますが、
心配なのは新型コロナ下のメンタル
「その後、ほかの自治体にも広がりを見せているという」
そうですね。ほかの自治体の方々が、視察に来ていただき「これはスゴイ」と思われ、広げていただいています。滋賀県や和歌山県など。
ただ、今の新型コロナ下、オンラインでするしか方法がありません。一人でできるもっとよい方法を今、考えています。特にシニアとオンラインはマッチングがまだまだ悪い。
「そうですね。新型コロナ下でのシニアの健康が気になりますね」
そう、これだけ長引くとダメージが心配です。特にメンタルです。メンタルは数字になかなか出てこない。スポーツボイスは、エクササイズと音楽の力。音楽でメンタルを明るく鍛えてほしい、と願います。
もともと、65歳でシニアはまだ早い。75歳からでもいいのでは。もう一つ二つ、がんばってほしい。
私のあこがれている、ローリング・ストーンズのミック・ジャガーは今年の7月で78歳。あれだけのパワーがある。まだまだです。

好きな音楽だけをしてきた。
シニアにはシニアなりのカッコよさを
「経歴を拝見すると、いくつもの転機を重ねられていると思いますが、どうやって乗り越えてこられました? 退職前後という転機にあるシニアの方の参考になればと」
うーん、ひたすら好きなことをしてきただけなのです。中学の時からバンドがしたくて、高校に行きましたが、自分が勉強している間にほかの人が楽器の練習をしているわけです。負けてしまうと焦っていた。
高校を辞めたいと。もちろん親も学校も反対。そこで、校長先生の前で自前の歌を何曲か歌い認められました。でもそのあとは、まあ儲からない。自分は四畳半で、友人はスキーやテニスとかやって遊んでいるわけ。
でも、うらやましくなんかなかったですね。飲み屋でライブとかして、楽しかった。自分に正直に生きようと納得してやってきたのが、長く力を出せたということなのでしょう。
「これからシニアに対してされたいことはどんなことでしょうか」
そうですね、スポーツボイスの幅を広げて、60、70代が歌い、若い人があこがれる、ロールモデルを作りたい。
まあ、それぞれですからいいのですが、シニアの方にバイク、革ジャン、サングラスのかっこをさせる、若い人から見てどうなのでしょうか。年を重ねてああなりたいと思うのでしょうか。
ダンスは若いほうがカッコいい。シニアなら日本舞踊ができるほうがカッコいい。歌にしたって、今の曲でなく、エルヴィスとかゴスペルとかのほうがいいと思ってしまいます。若い人に媚を売っても、と考えます。
日本を元気にするシニアなりのロールモデルを作っていけたらと思います。
シニアの方が自虐的になることはない。堂々と生きましょう。時代を作ってきたのですから。
「その上に今の人たちがあるのですものね。本日はありがとうございました」
お問い合わせ先
SportsVoice – スポーツボイス|声から始める健康生活
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https://sportsvoice.online
参考
スポーツボイス大学院「男の声をとりもどせ」 – YouTube