ファイナンシャル塾

60歳以降の働き方と年金の関係について考えてみる

今回のご相談者

伊藤様(女性 61歳 S37年8月生まれ)
伊藤様:

こんにちは、今日は今後の働き方について相談に来ました。

蔭山先生:

初めまして、承知いたしました。では、ご相談内容を伺いましょう?

伊藤様:

はい、60歳までA社で勤めておりまして、この度定年退職になりました。会社では再雇用の制度があるので、一先ず仕事をすることを決めたのですが、でもたくさん働くと年金が止められるって聞いたことがあるし、どれくらい働いたらいいのかと思っています。また、私の年金額がどのくらいか知りたいのです。

蔭山先生:

そうですか、年金額と、支給停止についてのご相談ですね。
その支給停止の制度は、『在職老齢年金』というのですよ。
まず、今日お持ちいただいているねんきん定期便と、具体的な今の収入お伺いしましょう。

伊藤様:

ねんきん定期便は、60歳の時に届いたものを持参しました。
再雇用の仕事のほうの収入は65歳まで毎月37万円がもらえることになっています。

蔭山先生:

はい、ではまず年金定期便を見てみましょう。
見てください、ここ

特別支給の老齢厚生年金と書いてありますね。
これは62歳から受け取れる年金がありますね。

伊藤様:

62歳?年金は65歳からじゃないのですか?

蔭山先生:

いいえ、これは以前に年金が60歳からもらえていた時のなごりなのです。こんな感じでまだ受け取れる金額が残っているのです。

伊藤様:

へぇ、62歳だと私はまだ働いているから、65歳まで受け取らずに繰り下げると、どのくらい金額は増えるのですか?

蔭山先生:

 特別支給の老齢厚生年金は繰り下げて受け取ることはできないのです。お誕生月になったらお住いの年金事務所に行ってお手続きしてくださいね。

さて、ご相談の在職老齢年金について解説しましょう。
支給停止額の計算はこうです。

まず、お給料の金額、伊藤さんは37万円もらっているとおっしゃっていましたね。標準報酬月額と言って、社会保険料を決めるための等級を見ると、伊藤さんはお給料が38万円の人になるのです。

この金額にここの厚生年金の金額を足します。
47万円から出っ張っている金額の半分が支給停止になるのですよ。

伊藤様:

と言うことは、私は1.2万円
お給料が低ければこの金額はもらうことができるのかしら?

蔭山先生:

 はい、そうです。でも、しっかりお給料をもらうのも良いことなのですよ。伊藤さんのように社会保険に入り続けてお仕事している方は
65歳からの年金が、ねんきん定期便に書いてある金額よりも更に増えるのです。年金を満額もらうためにお給料を控えめにするのか、
65歳からもらえる年金を増やすためにお仕事を続けていくのかです。

伊藤様:

もし、65歳まで働いたどのくらい増額されるのですか?

蔭山先生:

 65歳まで38万円(標準報酬月額)でお仕事したら、おおよそ厚生年金額が108,300円増えます。更に、伊藤さんの定期便を拝見すると、18か月年金を支払っていなかった期間がありますね?

伊藤様:

どこを見たらそれがわかりますか?

蔭山先生:

年金定期便はお誕生月の2か月前に作成されますから、伊藤さんの場合、ここに478と書いてあるはずなのです。

ですから、経過加算分(不足期間18か月の穴埋め分)を合わせると、だいたい137,000円年金額が増えます。

伊藤様:

んん、月1万円くらいなのね。

蔭山先生:

はい、でもこの金額が65歳から、亡くなるまで毎年です。
厚生労働省の簡易生命表を見ると、女性の半数は90歳まで生きるのです。13.7万円が25年ももらい続けられるなら、大きな金額になると思いませんか?

伊藤様:

そうね、あと繰り下げ受給が今年から変わったと聞いたのですが。

蔭山先生:

はい、今まで70歳までの繰り下げが、75歳まで可能になりました。

伊藤様:

いつもらったらお得なのですか?

蔭山先生:

この質問は難しいですね。いつまで生きるかにもよるのです。
伊藤さんの年金を例に表を作ってみましょう。

でも、この繰り下げ制度、途中でやっぱりやめることもできるのですよ。

伊藤様:

どういうことですか?

蔭山先生:

例えば伊藤さん、68歳まで年金を繰り下げていたとしましょう。やっぱり、長生きする自信がない、もしくはお金が必要になったらこの繰り下げた3年分の年金額をやっぱり一時金で受け取ることもできるのですよ。

だから今、どちらが得か考えなくても、65歳にお元気で仕事を続けているのでしたら繰り下げようかなとか、やっぱり繰り下げた分を一時金で受け取ろうかなと後で考えたらいいのです。

伊藤様:

なるほど。

蔭山先生:

将来のお金の具合はキャッシュフロー表と言って年表のようなもので一先ずプランをたてます。でもプランはあくまでも今のプラン将来どうなっているかはわかりませんからね。

その時にどのようにも対処ができるように用意しておけばよいのですよ。

伊藤様:

ありがとうございます。これでしっかりお仕事をする決心がつきました。

蔭山先生:

それは、良かったです。

今回のポイント

在職老齢年金の支給要件について、
年金の支給が停止になっても、お仕事をし続けることで
今後、受けとれる年金額が増える仕組みになっています。
せっかくもらえる年金ですが、しっかりお給料をもらっていくのも選択かしれませんね。

また、年金の繰り下げ受給については
得?損?回答は見つかりません。
年金を受け取る頃に元気であれば、据え置き、将来受給できる金額を大きくする。

仕組みを知ると選択肢が増えます。
是非皆さんも、色々な制度にアンテナを張ってみてください。