連載コラム第3回 「笑う門には、未病あり」

福生吉裕先生Yoshihiro Fukuo
1.100歳長寿者に聞いた「長寿の秘訣」
全国で100歳以上の方は9万人以上(2022年9月現在)と言われる時代となりました。これらスーパー長寿者を対象とし何が長寿の秘訣なのか、という報告も多く出て参りました。ただこの手の研究には「本当か?」というと甚だ不明のところがあるのも確かです。今回みなさんにお話するのは慶応大学のチームが行った研究で、“一考の余地がある報告” ではないかと思います。
それは血液中の「CRP」という物質が少ない人のほうが、長生きしているという報告です。
2.CRPとは何?
CRPとは、C―リアクティブプロテイン(C反応性蛋白)の略称で、風邪がこじれた時やお腹が痛い時に体内で起きている炎症のマーカーです。身近なクリニックでも測定できる検査です。お医者さんはこれを測って病気の重症さを推測し、今後の見通しや治療方法を検討するのです。
このCRP測定をより高感度で測定できる方法が開発され、ほとんど自覚症状が無い高齢者のCRPを測定したのですね。すると、老化しやすい身体としにくい身体ではCRPの数値に差が出てきたのです。特に100歳を超えてお元気な方は、このCRPが低い傾向が見受けられました。
実は身体が老化していくことの大きな原因は「微妙な炎症の積み重ね」で、これが「身体の劣化速度」を決めているというモノでした。
3.炎症を抑えるには?
長生きの方は清潔で、身体を痛める異物が少なく、身体の中で異常な免疫反応が起こらない状態を保っているということがわかってきました。
そこで身体の劣化を進める物質にはどんなものがあるか?と言いますと「タバコ」「紫外線」「ウイルス」「トランス脂肪酸」「カビ」「食品添加物」などの外部物質と、生活環境による「高血糖」「高血圧」「悪玉コレステロール」「終末糖化産物(AGEs)」「強いアルコール」ストレスで出る「アドレナリン」「フリーラジカル(活性酸素)」なども劣化(老化)を促進する要因となります。
4.NK細胞(ナチュラルキラー細胞)こそ大事
この高感度CRPを緩和してくれるものがあります。答えは「抗酸化物質」と免疫系を司る「ナチュラルキラー細胞(NK細胞)」で、これがしっかりしていれば無駄な免疫反応を潰してくれることになります。NK細胞、聞いたことがある人も多いと思います。
このNK細胞を元気にさせる秘訣があります。いくつか挙げましょうか。
- 笑う
よく笑うことはNK細胞の活性化と大きな相関関係があります。親しい人と接して適量のお酒を飲んで(摂りすぎはダメ)楽しく会話をすることなども良いですね。人付き合いが苦手な人は趣味や地域のサークルに参加したり、もちろん仕事で脳に適度な刺激を与えるなどもおすすめです。 - お風呂で身体を温める
お風呂に入るとHSP70(ヒートショックプロテイン70)という防御タンパクが身体のなかに誘発され、これが痛んだ細胞を修復したり疲れにくい身体を作ってくれたりします。 - トランス脂肪酸を多く摂らない
マーガリンやショートニングなどに多く含まれるトランス脂肪酸は悪玉脂肪酸と言えますので、塩分同様摂りすぎはあまりよくありませんね。 - ウォーキング、特に緑の地を歩く(森林浴)
森林セラピー・森林浴の免疫機能に対する効果が明らかにされつつあります。森林浴はNK細胞の活性化とともに、ストレスホルモンの抑制効果もあると言われています。実は私も森林医学学会に入っております。 - よい睡眠、休息
質の良い睡眠は疲れた脳や身体の回復タイムであり、睡眠で免疫力そのものが上がります。質の低い睡眠はNK細胞の活性度も下がります。
特に、①の「笑う」は大切で、落語を聞いた前後にNK細胞を測定する実験では、笑うだけでも活性が上昇し、さらに声を出して笑う動作を真似るだけでも同様に上昇することが未病学的にもわかってきました。
ちなみに、この実験の落語の演者は林家木久蔵(現 木久扇)さんだったということですが、名人かどうかで多少NK細胞の活性度合いも変わりそうですが・・。

東陽町で、ちょっと一杯
お酒の好きな福生先生にインタビュー
- 記者:
先生、今日は笑いのお話でしたが、先生はいつも笑顔でいらっしゃいますよね。
- 福生先生:
そうかなぁ。怖い顔してると患者さんは本当の辛さが言いにくいのですね。リラックスしてもらって本音の所を言ってもらう。そうしたらいつの間にか笑顔になったのかなぁ。
- 記者:
確かに。福生先生が笑っていなかったらちょっと近寄り難いかも・・。
- 福生先生:
いやいや、笑っていない時でも怒っているわけではないからね、どんどん話しかけてくれていいんだけど。でも確かに出来るだけ笑顔でいるように心がけてはいるかな。「未病」の観点からも、笑顔でいることは本当にとっても大切だからね。
- 記者:
「未病」といえば、先生が代表を務められている「未病総合研究所」の「未病サポーター養成研修」ですけど、これって1日1時間×4日間で誰でも「未病サポーター」の資格が取れるんですね。
- 福生先生:
-
そうそう!前からそれを言って欲しかったんだよ。未病サポーターは自分の身体のため、家族の健康のため、そして社会活動のためにもなってくるしね。優れものなんだよ。そして受講料も3,000円だから安いしね!(先生、手をバタバタさせる)
- 記者:
そうですか、じゃあ次回のコラムはこの未病サポーター養成研修や未病についてもう少し教えてくださいね。
- 福生先生:
え、え、今じゃないの?
- 記者:
じゃあ先生、お酒空いてますから、次は何をのみましょうか?