対談企画「未来に向けてチャレンジを続ける若宮正子さん!」

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対談企画「未来に向けてチャレンジを続ける若宮正子さん!」(下)

【対談企画】
未来に向けてチャレンジを続ける若宮正子さん!
若宮正子さん(マーチャン)から人生を楽しむコツを教えてもらおう!

Chapter2:マーチャンに聞く『独学のススメ』

マーチャンの著作のひとつ『独学のススメ 頑張らない!「定年後」の学び方10か条』の中から、気になる点についてお聞きしてみました。

独学のススメ 頑張らない!「定年後」の学び方10か条

第1条
バンジージャンプじゃあるまいし、こわがらずに飛び込んでみよう!
第2条
飽きたらやめちゃえ
第3条
「英語」は大阪人のノリで
第4条
ノルマを課しちゃダメ
第5条
「やりたいこと」の見つけ方、お教えします
第6条
ちょっと待った! 自分史を書くのはまだ早い
第7条
「将来」に備えない。10年経ったら世界は違う
第8条
退職してからのお友達の作り方
第9条
本から学ぼう
第10条
教えることは、学ぶこと

『独学のススメ』(中公新書ラクレ)より引用

中央公論新社,2019年
協会 増田

『独学のススメ』は旅行の話から始まっているんですね。
英語は準一級ということですが、英語圏でない地域にも行っていらっしゃるんですね。
言葉の通じない外国に一人で行くのは躊躇があるのが普通ですよね。だから、すごいなと思います。

若宮さん

外国の言葉なんてできなくても、生きていけるんです。

昔チェコに⾏ったときは、あちらの人たちも英語が話せず、チェコ語と⽇本語でお互いに⾔葉が通じない状態でした。正しい英語が話せることは万能ではないのです。むしろ、言葉の壁を乗り越えたコミュニケーション能力が肝心と痛感しました。民宿でぶらぶらしながら、朝ベーコンの香りをたどっていくと、食事する場所にたどりつけるのです。行きたい場所は、地図があれば、身振り手振りで何とかなりますし。

日本人の国民性は、心配性で苦労性なんですよ。

日本に来る外国人は日本語なんてできませんよね。それでも、迷子になったりして警察のお世話になるようなことは、そうそう起きません。
昨年6月にはデンマークに行きました。その時も、「あっ!そうだ、デンマークに行こう。」と思い立って、すぐにエアチケットを買ってしまいました。

私はもともと好奇心が旺盛なんです。まだ自由に海外旅行に行けないころから、有楽町の航空会社がたくさんある辺りに行って、海外のパンフレットをもらってきたりしていました。私が40代のころから、自由に海外に行けるようになり、一人で海外旅行をするようになりました。

協会 増田

「こわがらずに飛び込んでみよう!」と書かれていますが・・・

若宮さん

私からすると、新しいことを始めるのに、何を大騒ぎするんだろうと思います。

プログラミングを知るのに、勇気や決断がいるのかしらと思います。近所迷惑にもなりませんし。パソコンも飽きたらやめたらいいんです。

協会 増田

若宮さんの行動力がすごすぎて、周りの方々は引いたりしませんか?

若宮さん

鈍感力というか・・・
私ほどの変人になると、面白がって、みなさんが応援してくださるんですよ(笑)。

銀行時代も、いじめられた記憶はありません。周りは、私のことを面白がっていたように思います。試験制度ができて、面白そうだなと思い、人事の担当者に「女性でも受けられますか?」と聞きに行きました。その人は、一生懸命調べてくれて、「女性が受けられないと書いてない」と教えてくれました。更に心配して、自分が使った参考書まで貸してくれました。私は要領がいいものですから、結構いい成績を取れたりして・・・。その後からは、女性もボツボツと試験を受けるようになりました。

「メロウ倶楽部」の活動を始めた当初も、失敗しては、先輩からよく𠮟られました。周りからは、「60才過ぎて、よく耐えられるね。」と言われましたが、そういうことはあまり気になりません。叱られるのはありがたいことなんです。直せばいいだけなのですから。

今まで私は変な人と言われていましたが、今は何でも思いついたことをやる時代になってきていると思います。

協会 増田

定年を機に、これまでのキャリアの棚卸しをする方も多いと思いますが、 「自分史を書くのはまだ早い」と書かれていますね。

若宮さん

私は子どもがいないのでお金をどうするかが問題でした。75才の時に知り合いの司法書士さんに勧められて、遺言を作りました。しかし、その後⼈⽣がすっかり変わってしまいました。最近になって私はいくつかのNPOの理事をお引き受けしたので、そこのために使ってほしいと今は思っております。

自分史を書くと、次に何をやるかを考えなくなって、人生が終わってしまいます。自分をバージョンアップすることがなくなり、違う自分になれなくなります。

70才はこれからコンテンツを作る時期なのです。自分史を作りたいなら、ブログなどに、日記だけでなくもろもろのことを書き込んだほうがいいと思います。事実を書きためたものを見て、20年前、30年前の自分と比較して、自分がヴァージョンアップしているかを確認するといいのです。

協会 増田

世の中では、老後のために2,000万円必要というようなことが言われていますが、 「将来に備えない。」ということをハッキリおっしゃっていますね。

若宮さん

いつ何が起きて、どう変わるかわからないのですから、チマチマお金を貯めても仕方ないのです。それより、今を充実させたほうがいいのです。

2,000万円持っていれば、100才まで生きていても大丈夫かというと、わかりませんよね。

今後、自分の思いとは関係なく、戦争に巻き込まれるかもしれません。今ある会社だって、これからどうなるかわからないですし。気候変動とかいろいろなことが起きてくると思います。

現実にコロナが起きたことで、いろいろなことが大きく変わってきています。コロナの経験で、備えていても仕方ないということを学習したはずです。

学者の方々は日本でテレワークが定着するのは10年先だと言っていましたが、コロナでテレワークが一気に進みました。テレワーク下で“営業活動”なんてできるはずないと思われていましたが、実際はできてしまったんです。

Chapter3:マーチャンに聞く“これから”

マーチャンが現在取り組んでいることやマーチャンの暮らし方について、お聞きしてみました。

協会 増田

デジタル庁でのお仕事、講演など、現在も多方面で活躍されていますが、
今後に向けて、若宮さんの目標としていることはどのようなことですか。

若宮さん

私は、今一番やらなければならないことをやっているだけです。

長期目標はありません。今やっていることがすべてで、将来の目標は立てていません。

私のミッションは、誰⼀⼈とり残されない、人にやさしいデジタル改革のお手伝いです。特に、老いてこそ、デジタルが必要だと考えています。

少子高齢化が進むと、ヘルパーさんや介護⼠さんになってくださる方も少なくなって、介護保険制度での高齢者支援も成り立たなくなります。高齢者は自立しないといけなくなってくるのです。介護⾯を発展途上国の方にお願いしようと思っている方もおられますが、発展途上国はすでに先進国になってきています。今後、わざわざ日本まで来ていただくことは期待できません。そこのところを高齢者の方々にわかってほしいと思います。

スマホばかりでなく、コンビニではセルフレジ、ファミレスではタブレットを使いこなせないと、生きていけない時代になっています。ファミレスで、注文できているか不安で3回クリックすると、コーヒーが3杯きたりします。(笑)

デンマークでは、遠隔医療が中心になっています。お医者さんに直接脈をとっていただく機会は無くなりつつあります。自分で検査をして、検査結果はインターネットで送信され、お医者さんとはオンラインで向き合うことのほうが多くなりつつあります。リハビリもオンラインになりつつあります。やがて、日本もそうなっていきます。

これからは、テクノロジーのお世話になって、高齢者は自立しなくてはなりません。

例えば、アレクサがあれば、寝たきりでも困りません。

協会 増田

デジタル化のネックになっていることは、どのようなことだとお考えですか。

若宮さん

高齢者のデジタルアレルギーはまずいと思います。

文科省も、子どもにとって、ITやスマホは悪いものとして、積極的に使わせないようにしてきました。これからは「使わせない」より「正しく使う」ように教育すべきと思います。

高齢女性のデジタル知識の理解度が低いのは、当時の政府が意図的に女性の社会進出を避けたことが大きな原因の一つです。女性にとって扶養控除の仕組みが、デジタル化の遅れの要因になっているのです。特に高齢女性たちは、企業戦士の夫を支えるのが役割でした。働いてもパート程度で、社会との接点が少なかったのです。結果的に、近代的なものやITから縁遠くなってしまいました。

家族間で、子世代が親世代に、デジタル面を教えるようになるといいのにと思います。

デンマークでは、子どもが親にデジタルを教える責任があるということになっています。パソコン画面を共有して、子どもが教えたりしています。

協会 増田

少し話が変わりますが、今の生活についてお聞かせください。
お忙しいようですが、年間どのくらい講演をされているのですか。

若宮さん

年間100回位講演をしています。3日に1回位のペースです。

一昨日、北海道から戻ってきました。その前は熊本に行っていましたし、更にその前は富山県氷見に行っていました。コロナの時には、オンラインで講演していました。

協会 増田

そんなにお忙しいなら、健康にも気をつけていらっしゃるのでしょうね。

若宮さん

特に健康には気遣っていません。食べたいものを食べ、やりたいことをやっています。

健康は気にしていません。ごく普通の食事をしています。これだけ動いているので、食べないとやっていられませんし。最近は日帰り出張が多いので、駅弁評論家のごとく、駅弁をよく食べています。

自分がこんなに体力があるのは、これだけ働かされて、やっと気付きました。

協会 増田

無難に暮らしたいという風潮の中、やりたいことをやっている若宮さんは、あらためてすごいなと思います。

若宮さん

私は人からどう見られるかなんて気にしません。自分のしたいことをする!

今の若い人たちは洋服も⽬⽴ちたくないからと、保護色みたいなのを着ますね。赤いブラウスを着ようかどうしようか、こんなの着たらなんて言われるか。あなたが気にするほど、周りはあなたのことを気にしていないと言いたいです。

かえって、「自由にしていいよ。」「規制がない。」というほうが困ってしまうんですね。型にはまっているほうがラクで、無難なほうにいってしまう。そんな国で、新しい産業や先端技術は生まれるかしら、だから、どんどん沈んじゃうじゃないかしら、と思います。

番外編:エクセルアート

エクセルアートとは?

マーチャンが創始者。表計算ソフトMicrosoft Excelの「セルの塗りつぶし」や「罫線」を使って、作るアート。

  • マーチャンが着ているブラウスの生地

  • 袋類

  • ウチワ

編集後記

今回は、マーチャンに戦争体験のお話もお聞きしています。混乱の時代であっても、おおらかにポジティブに乗り切っておられます。また、銀行員時代も管理職まで昇進されており、働く女性の先駆け的な存在です。こちらも、気負いなく楽しそうに、乗り切っておられます。
そして、その後もパソコン、プログラミング、デジタル化の推進と、次々と新たなことにチャレンジされていっています。マーチャンは生涯現役のお手本そのものですね。こんな生き方がしたいなと憧れを感じます。
マーチャンの根本にある、『自分を絶えずバージョンアップしていこう』という姿勢はシニアばかりでなく、すべての人が心掛けなくてはならないことだと痛感しました。その姿勢があれば、マーチャンのようにはスイスイとはいかなくても、実りの多い人生が送れそうです。

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