自分らしく生きるための自分

今回、お話をお聞きした海原純子さんは心療内科医であり産業医。そして、ジャズシンガーでもあるという多才な女性ということをご存知の方も多いのではないでしょうか。さらに、健康な心で自分らしく生きる方法の様々なエッセンスが満載の著書もこれまでに90冊以上執筆されてきました。

自分が自分らしく生きていくためにはどうすれば良いのか。とにかく、結論を知りたいという方にあえて海原さんの言葉を最初にお届けします。

「自分を縛っている鎖とは何か。それを知り、克服する方法を自分で学ぶことが大事」

目次

日本の社会の文化的なゴースト

幼少から反抗児であったという海原さん。お遊戯の練習中に喉が渇いたのに水を飲ませてくれない先生への反抗心から逃亡して先生にお追いかけられたり。学校も嫌いであったので、週に一回は医師であった父親に診断書を書いてもらって、学校を休んで本を読んだりしていたそうです。

「周囲に馴染みたいと思ったこともありましたが、あまりにも世界と考え方が違いすぎて話も合わない。であれば、話そうとしなくていい。あえて群れることもない。よく、一人で食事をするのが寂しいという人もいるけれども、大勢で食べるのと一人で食べるのではそもそもの根本が違います。他の人たちと食べるのはコミュニケーションを取るという意味合いがあっての食事であり、一人で食べることが寂しいと思うのは自分の考えではなく別のものに縛られているからです」

人を縛るもの。それは、その時に常識であると認識されていたこと、社会の規範とされてきたもの。例えば、日本でも古くから性別規範や年齢規範という多様性社会の現代の考えとは真逆の暗黙のルールのようなものが存在しています。

「米国のユダヤ人心理学者であるアーノルド・ミンデル(Arnold Mindell)さんによれば、社会に染みついた、文化に染みついた規範を変えることは難しいと言っています。さらに、日本の社会の文化的なゴースト、すなわち、わからないうちに縛っているものとは何か。それは『御上(おかみ)』という意識であると。『御上』に睨まれたら終わりだという意識を持っていると。今で言えば、『御上』とはマスメディアであったり、政治家であったり、自分よりも立場とかが上と思っている人たちのことですね。会社では上司に睨まれたり、嫌われたら生きていけない。結果、そちらになびいて生きていってしまうということです」

確かに、男性は、女性は、という概念が世間の一般常識になっている国は多く存在します。日本でも、男尊女卑の考え方や、何歳になったのだからこれが出来るようになっていなさいと言う親が大多数であった時代はそれほど遠い過去ではありませんでした。

「ただ、ミンデルさんは、その状況に気づいた人が強いと言っています。そういう社会で自分は生きているということを気付くことが重要であると。しかし、日本は気が付くことを禁じてしまっていた閉鎖社会が長く続いて来ました」

年齢規範とか性別規範といったものがだいぶ薄らいで来た社会になってきたような気もするのですが、海原さんはそうではないと。

「総論的にはどんどん女性も活躍しましょう、と言います。しかし、自分の配偶者や恋人となると、どうでしょうか。手のひら返しにネガティブな人がまだ多いのではないでしょうか。日本社会は生きにくい社会ですけど、自分で気がついて、自分が生きにくくないように生きようと思っている人たちが増えれば社会も変わるでしょう。でも、社会が変われば自分が変わるということではないですから、自分が変わらなければ何も変わらないですから」

相手も自分も「OK」というゴール

読売新聞で長きに渡って人生相談のコラムをやられてきた海原さんにとって、相談者の悩みの根本は何も変わっていないそうです。

「相談で夫を変えるにはどうしたらいいですか、という人は多いですね。しかし、夫は変わらないのです。相手を変えることは難しいのです。変えて欲しいと思っている根本の自分の考えや主張を相手に理解させるには、相手のことを尊重しながら適切なかたちで行わなければなりません。ポイントは円滑なコミュニケーションを行うということが目的であり、年齢規範や性別規範という日本古来からの考え方に縛られずに、お互い対等な関係でコミュニケーションを取れるようになれる自分に変わるということです」

一方的に自分の主張を捲し立てたり、無理を押し付けてくる攻撃型の人は確かにいます。いわゆるパワハラの類いことを行う人に変わってもらうことは難しいです。そんな人に言いにくいことをさらっと言えるようになり、その人を変えるコミュニケーションがアサーティブ・コミュニケーションなるものとのこと。

「以前、昭和女子大学の特命教授をしていた時にアサーティブ・コミュニケーションの講座をやりました。この手法は1970年代にアメリカで注目され始めたもので、対等で心地よい関係性を作り出すためのコミュニケーション手法なのです。日本の女性のパワーアップのために身につけてもらえればと思って行いました」

ご自身の著書としても『誰でもできる!アサーティブ・トレーニング ガイドブック―みんなが笑顔になるために』(金剛出版)を執筆されています。具体的な本書の内容をこの記事ではご紹介しませんが、是非にご自身で読まれて、相手も自分も「OK」というゴールを目指すコミュニケーションを学ばれてみて下さい。

「対等で心地よい関係性を作り出すためのコミュニケーションには様々な方向性で考え、その場に相応しい言葉とは何かに気付かなれければ出来ません。その気付きのためには、一人、自分と向き合う時間が大切なのです。私も仕事が終わった後は、お茶を飲みながら何十年も使っている革表紙の小型の手帳に思っていることを書き綴ります。書くということで自分を表現して客観的に認知する。認知すると他の方向性もあるかもしれないと気づく。その気付きがあれば行動を変えることができるわけです。それに、自分と向き合う時間がないと精神的なバランスが保てないですからね」

基本的に、人は他人に要求される自分で生きている。だからこそ、自分が自分のために使う時間がどのくらいあるのかというのは大切なこと。なぜなら、その上に自分の人生が存在しているのだから、と海原さんは続けます。

「昼間、要求される事ばかりに時間を使って、帰宅してベッドに直行。そんなことを繰り返していたら、自分に向き合う時間が全然ない。だから、仕事を引退してしまったら自分は何もない。積み上げてきたものが何もないということにもなってしまうのです」

そして、自分と向き合い、色々と考えることで詐欺被害から逃れることも可能と。

「認知機能が劣っていくということもあるでしょうけど、頭を使っていないから詐欺とかに遭ってしまうと思います。色々な方向性や可能性を瞬時に考えることが出来るか、出来ないか。出来なければ、短絡的に思い当たった一つのことに囚われてしまうのです。そうならないためにはどうすればいいのか。誰かに頼るのではなく、自発的に自分で探して勉強することです。誰かの責任にするのではなく、そのことを成し遂げるために色々と考えをめぐらせること。それをしてこない人が詐欺に遭っちゃたりするのですから。色々な情報を収集して考え方が変わってくれば、短絡的に感情に振り回されることもなくなると思いますよ」

他の可能性を考えるという頭を使っていない。だから、短絡的に思い当たった一つのことに囚われてしまう。思い当たる方も多いのではないでしょうか。

「年齢や性別問わず、世界や価値観の異なる人と接することによる気付きは大切だと思います。日本はずっとタテ社会で閉鎖的社会。フラットなヨコでの繋がりを広げることで多様な考え方を知り、回答を人に頼らずに、自分の生き方を自分で考えて模索すること。それを続けることで充実した個人になり、ご隠居にならない充実したシニアになると私は思います」

海原先生_ライブ

今も年に4、5回のライブでジャズシンガーとして活躍されている海原さん。理想的な生き方をしている女性で羨ましいという方もいます。しかし、男性社会の医療業界で頑張って来られた背景には努力という言葉だけでは表現しきれない並々ならぬものがあったことは想像にかたくないです。

健康な心で、自分らしく充実した生き方をしたいと思っているかたは、是非に海原さんの著書で学び、歌声に癒されてはいかがでしょうか。

海原さんのプロフィールの詳細はコチラ

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