日本の経済状況や産業構造の変化により、ある業界の規模が縮小、ある職種が減少するといったようなことが起きています。これにより、新しいスキルの修得が求められる場面が増えているのです。特に、先進技術の進化やデジタル化の進展により、既存の職種が置き換えられるケースが増えているため、個々人の職業能力をアップデートし、新しい分野に挑戦する必要性があります。
また、70歳まで働く時代の到来を受けて、社会情勢に対応したキャリアパスを設計することが社会人として視野に入れることも重要になってきました。これまで積み重ねてきた職種や業界とは異なる分野やスキルに焦点を当て、現状の仕事をしながら新たな資格や知識を身につけること。それが、リスキリング(reskilling)なのです。
目次
リスキリングの効果的なプロセス
リスキリングを成功させるためのプロセスをさらに具体的に掘り下げると、次のようなステップを加えると効果的です。
1. 新たな目標の設定
- ライフステージに合った目標を明確にする
定年後のキャリアは収入のためだけでなく、生きがいや社会貢献を重視する場合もあります。目標を「楽しみながら働く」「社会に役立つ」「自己成長」といった価値観に基づいて設定しましょう。(例: 地域での農業支援活動、オンラインでの語学講師など) - 柔軟な働き方の検討
フルタイムにこだわらず、パートタイムやフリーランス、ボランティアなど、多様な働き方を視野に入れる。
2. 現在のスキルと経験の棚卸し
- スキルマッピング
これまでの職業経験で得た知識、スキル、ネットワークを一覧化します。特に、リーダーシップ、コミュニケーション、問題解決能力などの「ソフトスキル」は転用可能です。 - 不足しているスキルの特定
目標とする分野で必要なスキルや知識を調べ、それに基づいて不足部分を特定します。
3. 学び直しの計画策定
- 適切な学習方法の選択
適した学習方法を選ぶことが重要です。以下の選択肢があります:- 地域の学びの場: 地域の生涯学習センターやカルチャースクール。
- オンライン学習: Coursera、Udemy、シニア向けプラットフォームなど。
- ワークショップや短期講座: 実践型で学べる場が特に効果的です。
- 無理のないスケジュール作り
自由にできる時間や、体力や集中力の問題を考慮し、学びを少しずつ進められる計画を立てます。
4. 実践の場を見つける
- ボランティア活動
学んだスキルを地域活動や非営利団体で試すことで、経験を積むとともに社会貢献も可能です。 - インターンや研修
シニア向けのインターンや研修プログラムを利用し、実務経験を積む。 - スモールスタートの仕事
小規模な副業や短期間のプロジェクトで新しいスキルを活かします。
例: 写真編集を学んで地域のイベントで活躍。
5. キャリアの再構築
- 経験と新スキルの統合
長年の職務経験を活かしつつ、新たに習得したスキルを加え、自分の強みを再定義します。
(例: 営業経験を活かして、オンラインマーケティング分野で活動する) - ポートフォリオの作成
自分の学びや活動の成果を、見やすく整理してアピール資料を作成します。 - ネットワークの活用
これまで築いた人脈や、リスキリングを通じて得た新たなつながりを活かして機会を広げます。
6. 継続的な学びと改善
- 学びの習慣化
新しい分野の学びを続けることで、時代の変化に対応します。特にデジタルスキルのアップデートは重要です。 - フィードバックを活用
活動を通じて得たフィードバックを元に、自分の進むべき方向性や改善点を見つけます。 - マインドセットの向上
学び続ける姿勢や変化を楽しむ心構えを大切にすることで、ポジティブなキャリア形成が可能になります。
7. 社会とのつながりを意識する
- 社会貢献活動への参加
シニアが活躍できる分野として、地域振興や教育支援、環境活動などに参加し、社会に貢献します。 - 後進育成やメンター活動
自分の経験を活かして若い世代への指導やサポートを行うことも、リスキリングの成果を最大化する方法です。
リスキリングの課題
リスキリングは非常に有益な取り組みですが、以下のような課題や障壁も存在します。
1. 費用と時間
新しいスキルを習得するには、学習プログラムやトレーニングへの費用や時間を確保する必要があります。特に、働きながら学ぶ場合は、時間のやりくりが大きな課題です。
2. 高度なスキルの習得
テクノロジーの進化により、リスキリングに必要なスキルが高度化しています。特にデジタル技術、AI、機械学習などの分野では、専門知識や実践的な経験が求められ、敷居が高いと感じる人も多いです。
3. 効果的な学習手段の選択
オンライン学習の選択肢は増えていますが、自己学習の場合、適切な教材の選択や効果的な進め方を見つけるのが難しいことがあります。個々の学習スタイルに合った方法を見極めることが必要です。
4. 需要の変化
リスキリングを行う際には、将来の需要を見据えることが重要です。一部の分野では需要が増える一方で、他の分野では縮小している可能性があります。適切な分野を選ぶことが、成功への鍵となります。
課題を克服するためのアプローチ
これらの課題を乗り越えるためには、次のような対策が役立ちます。
- インターネットの活用: 信頼できる情報源を使い、適切な学習手段を見つける。
- 既存のスキルを活かす: 職務経験や現在のスキルを土台にし、リスキリングを効率的に進める。
- サポートの利用: キャリアコンサルタントや専門家のアドバイスを活用する。また、同じ目標を持つ仲間やコミュニティに参加する。
さいごに ーリスキリングとリカレント教育の選択ー
70歳までのキャリアパスを設計するのは簡単なことではありません。働きながらスキルを学ぶ「リスキリング」か、いったん仕事から離れて大学や専門学校で学ぶ「リカレント教育」を選ぶかは、個々のキャリア目標によって異なります。
かつてのように、将来のことを深く考えず、会社で日々を過ごすだけで済む時代はもう訪れません。特にシニアの再就職では、スキル、ナレッジ(知識)、そしてマインドセットが、企業との出会いを成功させる重要な要素となります。
将来を見据えた学びと行動が、より多くの選択肢と可能性をもたらすでしょう。
<リスキリングのおすすめの一冊>
40代でクビを3回経験し、書類選考や面接で落とされた数は100社以上、そんな現実をリスキリングで打破した実践者
でもあるリスキリングの第一人者が、中高年が直面するリアルな課題に応えます。
著者 後藤宗明さん
発行元 朝日新書
Amazonはこちらから