アサーティブコミュニケーションは、自分の意見を飲み込まずにお互いを尊重しながら意見を交換する、自分も相手もOKとするコミュニケーション方法です。このアプローチは良好な人間関係を築くために必要です。アサーティブなコミュニケーションは、自己主張だけでなく相手の意見も受け入れることを目指します。
歴史的には、1949年にアメリカの心理学者ジョセフ・ウォルピ氏によって開発されたカウンセリング手法が起源とされています。現代では、ビジネスのグローバル化やダイバーシティにより健全なコミュニケーションが求められており、アサーティブコミュニケーションは必要とされています。アサーティブコミュニケーションが現代社会で必要とされる理由には、以下のような点があります。
アサーティブコミュニケーションが現代社会で必要とされる理由
多様性の尊重と理解
現代社会は、文化的、社会的、経済的に多様性に満ちています。特に、シニアの皆さんが新たな職場に再就職する場合や若い世代と関わっていくなど、異なる価値観や背景を持つ人々が共存する環境では、誤解や対立が生じることもあります。アサーティブコミュニケーションは、自分の意見や感情を率直に伝えつつ、相手の立場や意見を尊重するため、相互理解を深める手段として重要です。
ストレスと不安の軽減
仕事やプライベートでのコミュニケーションにおいて、自分の意見を押し殺すことはストレスや不安の原因となります。アサーティブなコミュニケーションを実践することで、自己表現ができるようになり、精神的な負担を軽減することができます。自分の気持ちを正直に伝えることで、心の健康を維持することが可能になります。
生産性と効率の向上
職場でのアサーティブコミュニケーションは、チーム内の誤解や対立を減少させ、円滑な情報共有を促進します。これにより、プロジェクトの進行がスムーズになり、生産性と効率が向上します。問題が発生した際も、アサーティブに対応することで迅速に解決することが可能です。
建設的な人間関係の構築
アサーティブコミュニケーションを実践することで、信頼関係を築き、健全で建設的な人間関係を維持することができます。友人や家族、同僚とのコミュニケーションが円滑になり、深い関係性を築く手助けとなります。対話を通じてお互いのニーズを理解し合うことで、長期的な関係が育まれます。
自己肯定感の向上
アサーティブな行動を取ることで、自分自身に対する自信や自己肯定感が高まります。自分の意見を適切に伝えられることは、自分の価値を認識する一助となり、ポジティブな自己イメージを形成します。これは、日常生活や仕事において前向きな行動を取る原動力となります。
効果的なコンフリクトマネジメント
アサーティブコミュニケーションは、意見の対立や衝突を建設的に解決するためのツールとしても有効です。感情を適切に表現し、相手の意見に耳を傾けることで、双方にとって満足のいく解決策を見つけることが可能になります。争いごとを避けるのではなく、正面から向き合うことで関係の修復が促進されます。
グローバル社会での活用
国際化が進む現代において、異なる言語や文化を背景とする人々とのコミュニケーションが日常的に発生します。アサーティブコミュニケーションは、異文化間の交流においても効果的に機能し、誤解を防ぎ、円滑な関係構築をサポートします。
アサーティブコミュニケーションの実践
実践するためには以下の4つの柱を意識することが重要です。
1.誠実 (Sincerity)
– 相手を尊重しながらも自分にも相手にも嘘をつかずに物事に向き合うこと。
– 自分の主張を通すだけでなく、相手の意見も受け入れる広い心を持ちます。
2.率直 (Directness)
– 自分の気持ちや意見を包み隠さずに真っ直ぐに伝えること。
– 正直で簡潔に自分の気持ちを伝えることが求められます。
3.対等 (Equality)
– 立場や権力によらず、力関係によって迎合せずにコミュニケーションを取ること。
– あらゆる人間関係を対等に扱う精神性が必要です。
4.自己責任 (Responsibility)
– 自分の意志を曲げずに、自己主張をすること。
– 自分の信念を貫き通してコミュニケーションを取ることが求められます。
DESC法でアサーティブなコミュニケーション行う
これらの柱を意識してアサーティブなコミュニケーション行うための技法としてDESC(デスク)法というものがあります。自己主張をするための具体的な手法で、以下の4つのステップから成り立っています。
1.描写(Describe)
– まず、具体的で客観的な事実を述べます。相手に伝えたい状況や問題を詳細に説明します。具体的で客観的な事実を伝えることが重要です。主観的な意見ではなく、客観的な視点から状況を説明しましょう。
– 例えば、「昨日のミーティングで、私の提案が無視されました」という具体的な状況を描写します。
2.表現(Explain)
– 次に、感情的にならずに自分の気持ちを表現します。相手に対してどのように感じているかを率直に伝えます。自己主張をする際に感情的にならないように心掛けましょう。冷静に状況を分析し、感情をコントロールすることが大切です。
– 例えば、「私はその提案に多くの時間とエネルギーをかけたので、無視されたことは不満です」と説明します。
3. 提案(Specify)
– 具体的な行動について相手に提案します。自分の意見や要望を伝える際に、どのような対応を望んでいるかを明確に伝えます。
– 例えば、「今後は私の提案にも目を向けていただけると幸いです」と提案します。
4.選択(Choose)
– 最後に、自分がとるべき行動を選択します。自己主張をするために、どのようなステップを踏むかを決定します。
– 例えば、「次回のミーティングで再度提案を行いたいと考えていますが、よろしいでしょうか?」と選択します。
DESC法は習得に時間がかかることがあります。地域で開催されるワークショップやセミナーに参加することで、専門家の指導を受けながらアサーティブコミュニケーションを学ぶこともできます。専門書や一人だけでの練習では難しいと思われたら、サイトで検索してみてください。
積極型コミュニケーションをしやすい人とは
ちなみに、自分さえOKであれば良いという攻撃型コミュニケーションをしやすい人の特徴を知っておくことも大切なのでご紹介します。
1)自己中心的・独善的:自分の意見や欲求を優先し、他人の感情や立場を無視することが多い人。
2)プライドが高い:自尊心が強く、他人の意見を受け入れにくい人。
3)完璧主義者:過度に完璧を求め、他人にも同じ基準を押し付ける人。
4)根性論者:困難な状況でも「根性で乗り越えろ」とロジックではなく精神論だけで考える人。
5)他責思考が強い:問題が起きた際に他人の責任にすることが多い人。
6)朝令暮改で言動がコロコロ変わる:一貫性がなく、周囲を混乱させることがある人。
7)ストレスを溜め込んでいる:自分の感情をうまく処理できない人。
8)自身にコンプレックスがある:自分に自信がないため、他人を攻撃することで自分を守ろうとする人。
9)自身もパワハラや不当な扱いを受けてきた:過去の経験から、同じように振る舞うことがある人。
まとめ
アサーティブコミュニケーションは、自己表現と他者の尊重を両立させることで、多様化した現代社会において必要不可欠なスキルです。個人の精神的健康を支え、職場や社会全体の効率を向上させるだけでなく、より良い人間関係を構築するための基盤となります。このスキルを磨くことで、個人としても、社会の一員としても豊かな生活を送ることができるでしょう。